蓬(Yomogi) さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
タイトルなし
なにがいいって、車の音と銃の音がよかった。
それだけじゃないけど、今回は基本的に前作のままの脚本、コンテなので凄くかわったぞ~!と期待した物でもない。
ただ全体の色調がアンバーに振っていること。
また人形遣いの声が家弓家正さんから榊原良子さんに変更したのが大きな変更点。
あと一部がCGになっていたが正直特筆するほどの物ではない。中途半端。
かなりオレンジに色調を補正しているので前作の近未来感はなりを潜め、むしろ退廃したノスタルジーを感じさせる。
「にじみ」のように細部がつぶれた感じたしたので意図的に情報量を減らしたのかもしれない。
アンバーにしたことでイノセンスとの連続性を感じさせ、余計廃退的になってると思う。
これは前作がグリーン基調で新たな領域に展開する近未来SFというハードな印象とは真逆のものだ。
また人形遣いが男性から女性の声に変更したことで、すっかり解釈が変わってしまった。
女性の姿から家弓さんの声が聞こえてくるというザラリとした手触りは消えてしまっている。
人形遣いの特殊性を際立たせるゾクゾクするシーンだったので拍子抜け。
そのかわり成熟した大人の女性(素子よりも!)の声である榊原さんがしゃべりだす。
周囲の人間を完全に馬鹿にしたようなしゃべり方で非常に悪役風。
聞き始めは違和感があるが、見方をかえると解釈が変化してとてもおもしろい。
前作では人形遣いから素子へ熱烈プロポーズという解釈。
ストレートにラブコールを送っているように見える。
しかし今回は母親(人形遣い)が娘(素子)を取り込んでいるように見えてならない。
つまり人形遣いが男とすると素子は対等な関係でいられるが、女だとすると素子は母親の監視下に置かれた少女のよう。
素子役の田中敦子さんは前作とほとんど同じ演技をしているのに、今回ではひどく不安そうな印象になってしまっているのだ。
それは人形遣い=人智をこえた知性体が、求婚者としてではなくグレートマザーの役にすり替わってしまっているからだろう。
しかも恐ろしいなと感じたのは母親的な支配欲と生存欲求が肥大し、子供(素子)の自主性を飲み込んでなお、成長しようとするところである。
それが素子にとっても善であると人形遣いも信じているように感じる。
ラストシーンで街を見渡す少女は、更に融合する相手を漁ろうとしている新たな人形遣い=グレートマザーの独白と聞こえてしまった。
最後に、13年前の作画は2008年のCGに全く引けをとっていない。
こんなにも作画のパワーを再認識させられるとは思わなかった。