蓬(Yomogi) さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
タイトルなし
素晴らしい!これは意欲作もいいところ。よく作った。
これほど不健康な内容を夕方に放送してたんだから当時は本当に世相が暗かったのだなあ。
落ち込んでいるときに見ては駄目です。
「蠅の王」のオマージュといわれるこの作品。
500人の少年少女が宇宙艦という閉鎖空間で半年漂流するSF青春群像劇。
なぜ漂流しなければならなかったなどの政治的な理由は重要ではなく、監督と脚本家がやりたかったのは、
「大人のいない閉鎖空間で思春期の子供達が作る社会の縮図と、そこで発生する社会的問題、そしてそれをどう解決していくか」
というものであったと思う。
そしてそれを描くことで「人はなぜ人とつながって生きるのか」ということに一つの回答を示したかったのではないだろうか?
少し前に人気を博した、個人の問題が世界につながっている「セカイ系」に喧嘩を売るようなテーマである。
相手と向き合わなければ、コミュニユケーションを試みなければ何も変わらないのだと強く訴えている。
これは面倒な人間関係に向き合わなくてもなんとかなってしまう今の子供たちに対する喝であり、なんでそんな面倒なコミュニユケーションをしなければならないのか、ということを真面目に描いているのだ。
この作品を見て「不快感を感じて嫌い」という若い人は何に対して不快感を感じるのかじっくり考えてほしい。
超能力や魔法が使えたって、人対人の問題は解決できない。
非常に気の滅入る展開で、特に暴力と性を物語にしつこく絡めてくるのは思春期心理のウエイトがそれらに大きく依存しているからであり、本能的な欲求だからだろう。
不安定な秩序のなかで自分の立ち位置を必死になって探してるキャラクタたちは、自分の世代の感覚とシンクロする部分が大きい。
これをリアルタイムで見た10代はショックが大きかっただろう。
人間のエゴを子供でもしっかり持っているということを、ここまで焦点を当てて描いたアニメは他にないからだ。
また「今日より明日、明日より明後日のほうがどんどん状況が悪くなる」というのは99年の状況で絶妙なリアリティがある。
ラストに主人公が「伝えたいことがあるんだ」と言う。
自分はすごく納得した。
「伝えたいことがある」ということを「伝えたい」のだ。
視聴していて久々に「この先どうなる?!」という気分を味わった。
とにかく先が気になって仕方ない、ぶっ続けで見ることが全然苦にならない。
ゾクゾクするような中毒性を見事に発揮してくれた。