蓬(Yomogi) さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
タイトルなし
第一話で俳句のような作品だと感じた。
特に種田山頭火を思い出した。
余計な物が削がれている。
アニメでそういった感想を持つのは非常に稀。
最も洗練されていたのは音だった。
音楽は必要最低限しかかからず、無音になるシーンも多い。
その中でも風や海、雪の音までを今までにないほどナチュラルにつけてくる。
また自然界の音のみにあらず。
雪を踏む音、引き戸を開く音、箸を置く音という微細な音響の再現。
最も素晴らしかったのは、声の効果。
土蔵の中の囁きはこもった残響を、雪山では雪に声が吸い取られる感じに、沖の船からの大声は広い海原に拡散していく。
神経質といっていいほどデリケートなこだわりが作品の完成度を飛躍的に上げている。
またキャスティングもナチュラル発声のオンパレード。
これはどのキャラクタも一聞の価値あり。
音響がもたらすこの「気配」感はマンガでは表現しきれない。
絵は基本が静、物語の肝が動。
これは枚数が少ないということではない。
踊りがスローの方が難しいのと同様に、間合いの演技も地味にゆったりと雰囲気を醸し出している。
作画には有名アニメーターが参加しているが、派手な演技もないのでその人の癖は全く感じない。EDをみるまで気づかなかった。
そして絵コンテは監督経験者が多数参加。
贅沢すぎるが、これも最後まで気がつかない。
恐ろしいほどの完成度で作品一つを統一している。
特筆すべき点が多すぎて書ききれない。
OP、ED、予告などの本編以外のデザインも秀逸、アートワークといって過言でない。
この作品の最大の主役である「蟲」は精霊のような目には見えない虚ろなる者。
その異形のものたちと共生する物語を最高のアニメーションで表現。
蟲の「気配」というものをリアルに感じる。
原作に忠実、というのが監督のスタンスだったらしい。
はっきり言って原作超えだと思う。