蓬(Yomogi) さんの感想・評価
3.7
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
タイトルなし
1994年4月から天才てれびくんで放送された「バーチャル世界」舞台に繰り広げられる小学生向きSFアドベンチャー作品。
だがその設定は
「量子コンピュータにより分子一個一個の動きまで再現された仮想空間に人間をデータとして送り込み、過去の生態系をシミュレーションする。(中略)
ところがバーチャル世界は単なる仮想空間ではなかった。量子力学には「多時間解釈」と呼ばれる概念が(中略)
量子コンピュータとはたくさんの次元の間にまたがって存在する電子に情報を乗せ、これを演算に使うことによって、一度に膨大な数の演算処理を(中略)
それら無数の平行世界で独自に進化した知性生物、たとえば恐竜から進化した恐竜人類、獣弓類から進化した獣弓人類など(中略)
このとき量子コンピュータのメモリ内では無数の次元が重なり合い、自己類似的な情報の爆発的増加がおこる。バーチャルステーションではこれを「フラクタライズエラー」と呼ぶが、実はこれは(中略)」
DVDについていた世界観の設定文章なのだが、
ぶっちゃけ小学生にはわかりません。
ジーンダイバーとの題名の通り遺伝子に付いての作品だが古人類学、古生物学、はては量子力学と手広い。
監修の金子隆一氏のカラーが前面に出たシナリオと設定だと思われる。
凄いのは1994年4月からの放送にも関わらず、1994年7月に木星に衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星が伏線になってるという恐るべきシナリオ構成。
その回の放送は94年の冬だったはずだが、それにしても最新の科学考証すぎるだろう……。
人類の起源についてのトリックは、アフリカ単一起源説にミスリードしつつ実は多地域進化説が正解でした生物学的知識を要求する伏線を張ってくる。
その際にミトコンドリア・イブのエピソードが出てくるのだが、ミトコンドリア関連で一斉を風靡した「パラサイトイブ」の出版が95年なのでブームに乗ったシナリオではないのだ。
その後に遺伝子関係の作品が流行したので、ちょっと世に出るのが早すぎた作品だったと思う。
子供向けといえども科学的な説明に嘘はないし(今となっては苦しい学説があるけど)、理系の文法に乗っ取っているので合理的なストーリー。
謎解きミステリィの要領で物語が進むので飽きない。
キャラクタもクレバーなので見ていてイライラすることもない。
やっぱ子供向けハードSFは本当に面白いです。
最後に、最終回で語られた対話が本当に素晴らしかった。
SFの真髄を見た気がする。
<追記>
金子氏は2013年夏にお亡くなりになりました。
本当に本当にありがとうございました。