ostrich さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
アニメで「必殺!」とか!…大好きだ!
私は前情報を何も入れずに観始めたのですが、オープニングでもうやられていました。
「こ、これ、『必殺!』じゃねえか!」
もう、個人的にはこの時点で満点です。
「必殺!シリーズにオマージュをささげたアニメ作品があったなんて!」
必殺ファンであり、アニメファンでもある私にはオレ得すぎる作品です。
では、本作が必殺シリーズから受けたであろう影響を列挙しつつ、本作の感想を書いてみます。
■オープニング
日本画の使用、ナレーション、キャラクタのモノクロクローズアップ、すべてが必殺シリーズオマージュです。先述したとおり、私のような人間には、悶絶もの。
■物語の構造
基本的に、一話完結の復讐譚です。依頼者の苦境が描かれ、彼・彼女の苦しみが最高潮に達したときに、復讐のトリガーがひかれる構造は踏襲しています。
ただし、おそらく、設定の違いや、時間的制約により、必殺ほど型どおりにはなっていません。これは英断だったと思います。本サイトにも「前半は同じパターンの繰り返しで飽きる」というレビューがありましたが、前半は意図的に「必殺の型」をそのままやろうとしていた形跡があります。しかし、必殺は1話あたり50分弱の尺があるのに対し、本作は20分強しかありません。そこに、必殺の型をそのままあてはめてしまうと、1/4以上が定型になってしまいます。私のように「必殺の型」が好きな人間には、それでも十分に楽しめるのですが、中盤以降の評価が高いのは、この意図的な型崩しの効果かもしれません。
※現在、二籠(続編)を鑑賞中なのですが、よりこなれたシナリオになっており、20分強の時間内で必殺的な展開を実現しています。素晴らしい。
■キャラクター造形
1)若い色男(一目蓮)
2)年増の美人(骨女)
3)中年男(輪入道)
この三人一組の造形も、必殺オマージュのひとつだと思います。
1)は「組紐屋の竜」「三味線屋の勇二」など。
2)は「何でも屋の加代」など。
3)は「念仏の鉄」など。
主人公閻魔あいはオリジナリティの強いキャラクターですが、立ち位置はもちろん中村主水。主水の役割を美少女が担っているあたりに、作り手たちの「わかっている」感がにじみ出ています。
■エンディング
「必殺!」のエンディングは情緒的な演歌と相場が決まっております。能登麻美子の歌う演歌。まさにこの作品の象徴。
■勧善懲悪ではない復讐譚
実は必殺シリーズは「勧善懲悪もの」では決してなく、特に前期~中期は善悪をあいまいにした物語が数多くありました。そして、娯楽作として一般化する後期ほど、勧善懲悪の色が濃くなっていきます。
(必殺の)コアファンの評価は前期~中期のほうが高く、それは、おそらく本作の作り手たちも同様。あえて、観客を納得させない苦みを残すのは、本作の作り手たちが必殺シリーズに対して敬意を抱いていることと、そして、必殺の作り手たちと同様に、人生や、この世界に対して誠実であることの証だと思います。
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個人的には#13「煉獄少女」が特に好きです。
呪いの果てにある境地を、わずか20分強で描いています。本話の主人公にあたる人物が、柴田に語る「楽しみ」に妙に共感してしまいました。閻魔あいは悪魔ではなく、黒い天使なんだよね。