蓬(Yomogi) さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
タイトルなし
個人的に2008年のベスト。
毎週が楽しみで、どんなに未視聴のアニメがたまっていても「夏目は優先的に見よう」という気にさせられた。
話は1話完結方式で起承転結のしっかりした脚本。
エピソードは少し悲しくて、切なくて何とも言えない叙情あふれる物語。
物語中の人物たちは激しく怒ったり、深く悲しんだりという感情の爆発がない。
淡々とした雰囲気の中で人と妖怪の交流が描かれている。
この作品が癒し系と感じた人は多いだろう。
実際、主人公夏目を通して多くの人の「癒される過程」を描いたのがこの作品の魅力であり、テーマだと思う。
登場人物たちは過去の心残りや古傷などを抱えていて、それを紐解く夏目自体も傷ついた側の人間である。
傷を抱えながらも日常を生きている人々の物語なので、その治癒の過程も劇的な物にはならない。
その穏やかさ、大人しさ加減が素晴らしいと感じた。
多くのアニメ作品では視覚的な派手さを求めたり、単調さを嫌うため話の筋を引っ掻き回したくなるが、そんな事は一度もなかった。
監督がこの作品の魅力を十分に心得ていたことが伝わってくる秀作だと思う。
絵についても穏やかな良い作りだった。
全体の明度が高く設定してあるので、作品世界が色あせた懐かしさを思い起こさせる。
また背景についてもかなりリアリティのある日本の田舎風景。
なにより、毎回の作画水準が非常に高く、洗練されたキャラクタデザインが動くので見ていて良い気持ちになれた。
正直にいうと、男性キャラが大変好みの美形ぞろいだったのでそれだけで癒し効果があったと思う。
「夏目は3年したら絶対良い男になるよなー」とか(笑
いや。男性キャラがやたら色っぽいのね。(ビバ!白泉社)
音楽もとても良かった。
少数の楽器で奏でる、物語のトーンにあった空気感のある美しい物が多い。
そのなかでもエンディングテーマはその入り方(作品に前奏部分をかぶせる手法)も相まって、素晴らしい効果を上げていた。
全てにおいて高いクオリティを見せつけた素晴らしい作品だと思う。
なにより一つ一つのエピソードが視聴者の心に響く、そんな手触りのある物語だった。
13話で終わってしまって残念だったが、もうすぐ2期が始まるのでとても嬉しい。
2期がこんなに楽しみだった作品は「夏目友人帳」が初めて。
「癒される過程」を描いた作品なのに、肝心の主人公の問題がお茶を濁したように終わってしまったので、この辺りは綺麗に幕を引いてほしい。