蓬(Yomogi) さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
タイトルなし
まず第一に、お見事。
第一話見終わって、ポカーン。
これは本当にやられた。
事前情報なく第一話視聴をしたのだが、終盤まではよくある超常バトルもの。
ハイクオリティな格好いい仕上がりに大満足。
「パトレイバー」と「ブルーシード」を足して二で割ったような設定、キャラも十分に立っていて「こりゃあ良いシリーズになりそう」とウキウキ。
しかし、最後の最後で、突如全キャラ死亡という大惨事が発生。
燃え上がるティルトローターの効果音とテロップのみという異様なエンディングの中
「……え?なんかいま凄いこと起こったよね?」
と思ったのは自分だけではあるまい。
アニメ雑誌、公式HPともに偽情報を撒き(事前には監督、脚本家が座談会までやってる!)誰にも先のストーリーを予想させなかったことは凄かった。
もう、これだけで今期一番といわれてもおかしくない。
オリジナルストーリーでこの構成をやるのは賭けだったと思う。
本編が面白くなければ虚仮威しと叩かれるのは必死なのだし、よほど自信があったのだろう。
全体的な作りはとても丁寧だった。
作画については超安定していて、崩れたところや著しく絵柄が変わる事がなかった。
すっきりしたデザインのキャラが的確かつスピーディーに動く演技が見ていて本当に気持ちいい。
アクションシーンについても地に足のついた殺陣で、非常にメリハリがある。
あと、女の子の脚、特に膝裏が良いです。ここは文句なく今期一番!
全体的な色味についてもしっかり現実感のある配色で好感が持てる。
ロケハンを行い、できるだけリアリティある世界観を心がけていたようで、その成果がよく出ていると思う。
キャラの色いついても最近ファンタスティックに華やかな女子高生ばかりみているので、紺や黒の地味な配色がとても魅力的に映った。
世界観をキリリとよく引き締めている。
また音楽はどれをとってもハズレがないほど素敵な楽曲。
クールでドラマティックな曲がストーリーを「これでもか!」とばかりに盛り上げている。
ボーカル曲が印象的な使われ方をしていてセンスを感じる。
またこの作品は映像を見てから作曲作業を行ったとのことで、映像と音楽のシンクロ率が高い。
OPについてはぜひカラオケで歌いたい。
だがやはり、なんといっても構成が素晴らしかった。
シリーズ構成、脚本は高山カツヒコ氏。
3話まで見た時点でこれはコロンボ方式なのではないかと思った。
視聴者に結末は教えておいて、そこにいたるまでの過程に興味を引きつける。
しかし、その進め方では最後の落としどころが一番つまらなくなってしまうとも感じた。
どのように物語を畳むのかと思っていたら、なんとスターウォーズ方式!
しかも、エピソード4、5、1、2、3、6といった順番。
それでありながら原作エピソードは使っていないというこの秀逸さ。
絵の質も構成もこれだけ入念に準備された作品はなかなか出てこない。
恥ずかしながら監督のあおきえい氏の作品はこれが初めての視聴になったが、今後もぜひ楽しみにしたい。
物語について最後に一言。
黄泉の思考は潔癖だなと思った。故にまだ少女なのだなとも感じた。
恋人ではなく妹分の神楽が全ての行動原理になっているところが生真面目さを感じる。
黄泉がもう少しだけでも斜に構えた娘だったら、殺生石に付け入られることはなかっただろうに。
やはり、この「零」の物語は黄泉の物語だったのだなと感じた。