蓬(Yomogi) さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
タイトルなし
まず画について。
CLAMPのキャラ原案なので主要人物の美化が激しかった。
当初はこれで拒否反応を若干感じたが、話が進むにつれて気にならなくなった。
物語に実力があればデザインは気にならなくなるというのはよくある事。
ミステリィなので派手な演技は少ないが、作画水準は緻密で美しい。
その耽美さが色々な意味でデコラディブなこの作品に合っていたと思う。
また光の扱いが印象に残った。
少女を照らす月光や、縁側と書斎のコントラスト、汽車の中の夕日など。
こういった空気感を出すための細工が随所に施されていて、物語に説得力を持たせている。
背景についてもかなり綿密に時代背景を調べてある。
小説よりも情報量が多かったと言っても過言ではない。
実在の場所、時代を舞台にしているので、この背景で話のリアリティが最後まで支えられている。
演出について。
どの回をとっても的確な表現でありプロの仕事だと思った。
各演出家、コンテマンの理解力の高さをひしひしと感じる。
特に浜崎博嗣氏の回は前衛的で、その切れ味が作品の雰囲気を盛り上げている。
他にも座敷から一歩も出ない回も視覚的な変化を付けて視聴者を飽きさせない。
脚本について。
とにかく全ての伏線をきちんと張り、そして漏れなく回収した事が素晴らしい。
本来物語としては当然の事であるが、殊更アニメでは張った伏線を回収しない作品が存在する。
その当然の事を、さも当然のようにやらない作品が昨今あまりにも多い。
なので、なおのことこの作品の完成度が高く感じた。
原作小説の完成度が高いのは言わずもがなだが、だからこそ他メディアへの展開は難しい。
脚本の村井氏の構成力には素直に拍手したい。
分厚い原作を13本にまとめ、原作未読、既読問わず楽しめる作品に仕上げたのは、練りに練った脚本ゆえだと思う。
全体的には本当に完成度が高く、作品として文句がつけられない。
アニメ化に対してあまり期待していなかった。
しかし良い意味で予想を裏切ってくれて大変うれしい。
ぜひ他のシリーズもこのスタッフでアニメ化して欲しいと思う。
以下、乱文的感想。
強いて文句をつけるとすれば、最後の花火だけかな。
アレ以外はもうどうしようもないと思う。
頼子の行動が打算的演技だったとか、幼児体験が犯罪を誘発するという偏見に激怒する京極堂とか、陽子への愛を告白する美馬坂とか。
入れて欲しい箇所は色々あるけど、優先順位で言ったら本編で描かれていたものの方が高い。
むしろ原作と比較して追加された台詞、シーンで映像の利点を上手く生かしていたと思う。
特にラストシーンの関口下車での締めくくりは、作品の余韻を残す秀逸な物だった。
キャラは相変わらず立ちまくってたけど、ビジュアルがついた事で新たな魅力に気づいてしまった。
京極堂がやたらフェロモン振りまいてるとか、関口が姫ポジションだとか、鳥口くんがスゲー出来る男だとか、青木くんがインテリ好青年だとか。
だめだ……。書き出すと止まらない。
というか事件以外のメンバーのやり取りは少女漫画の文法だと思う。
何かに似てると思ったら「ここはグリーンウッド」に似てる。
こんな男いねーよ、みたいな美形がワンサカでてきて、つるんで騒動をおこしたりする典型的な少女漫画。(花ゆめ系)
女性ファンがつくわけだ。
ミステリィでは伏線の回収が命なのでそこをおざなりにする作品は論外なのだけれど、アニメではそうでないらしい。
でも物語として最後に「完」とつけられないものを出すのは視聴者に失礼。
事情はあるのはわかるが、それに慣れないで欲しい。
妥協するのが蔓延すると「所詮アニメ」と言われる最大の原因になってしまう。
そういう意味でスタッフの志は一流だった。
感謝。