蓬(Yomogi) さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
タイトルなし
予想とはだいぶ違う話で楽しく視聴できた。
絵のレベルはずば抜けて高いし、もう毎週目の保養になったことは言うまでもない。
とにかくこれほどのドローイングの美しさは最近のテレビシリーズでは中々ないので、非常に嬉しい。
さらに色使いについてもダルトーンで渋くまとめているかと思うと、別のシーンでは奇抜な黄色や桃色をポンポン使ってくる。
黒の量も多いのにコミカルな感じがするし、まったく常に油断のならない画面で大満足だった。
ストーリーについてはコンパクトにまとまっていてきちんと落ちもある。
しかしもう少しハチャメチャに広がっても面白かったかも。
特に明石さんを全編に絡めてラブストーリーを主軸に持ってきた方が自分は好みだった。
全てのパラレルワールドでキーパーソンとなったのは明石さんではなく小津だったので、これは大学生の友情と青春の物語なのだろう。
金はないが時間はある、恥は無いがプライドはある。
若きモラトリアムの日々を自分もやり直したい、そう思わせてくれただけでこの作品が好きになれた。
演出の話を最後に。
メタモルフォーゼや変形パースをもちいたドラッグ系とリアル系を織り交ぜた自由時自在の作画。
また実写や写真を意欲的に取り込んでの奇妙な世界観。
アニメーションの限界のなさを感じさせてくれるフリーダムな演出がにじみ出ていた。
それでいて無意味なカットは存在していない、物語に必要なものを分かりやすい画で見せてくれた。
最終話では主人公が走りながら衣装を変えることで、それまでの過程を走り抜ける様子をよく表現していた。
また、それまでの主観からみた小津と最終話での主観から見た小津が違う顔として描かれているのアニメならではの表現方法だった。
この作品は常に主人公からの主観で描かれている。
だからこそ、主人公が変化する(成長する、あるいは話数が変わる)ことで彼を取り巻く世界が違って見えることがアニメの得意な方法で表現できたのだろう。
人は自分のフィルターを通してしか周囲の世界を認識できないのだから。
さて、蛇足ですが10話は韓国人演出家のウニョンさんの回でしたね。
この回は特に写真が多かった。一番シュールな回だったかも。
久々に見たけど、次のお仕事が楽しみです。
またマッドハウスかな……。