蓬(Yomogi) さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
タイトルなし
「空虚だ。何も無い」と吾妻ひでおが斬って捨ててくれたおかげで、眠れる獅子が目を覚ましたようです。
シナリオ構成・吉田玲子と監督・山田尚子が牙を剥いた2期。
上記のように、1期は見るべき物は京都アニメーションの動くイラストだけ、というのが正直な感想だった。
しかし、2期になって急に面白くなったので「何事!?」と驚いてしまった。
1期は四コマ漫画ののんびりしたテンポをそのまま画面に落とし込もうとして、間延びした上薄味になっていたのに対し、2期は初めから「落としどころ」に向かって全力で駆け抜けていった。
落としどころとは、もちろん唯たちの卒業である。
そのため、最初から影の主人公に梓を配置しており、梓の視点から軽音部を語ることでセンチメンタリズムの演出を巧みに行っていた。
また、外部から軽音部を語る視線としてさわ子先生が何度も利用されているのが興味深い。
大人のフィルターを通すことで高校生同士では気づかない角度からの青春描写がなされていて見事だと思った。
軽音部の4人を可愛く楽しく鮮やかに描いた良作だと思う。
絵について。
今回は絵云々よりも撮影時の効果に注目。
デジタルエフェクトの技術が素晴らしかった。
分かりやすいのは後期EDなのだが、背景を歪ませる効果、カメラを揺らす効果、焦点を操る効果。
どれも画面に深みを持たせ、表現の幅がぐっと広がっている。
もともとモーションブラー(すばやい動きを出すだめのひっぱり)などは手っ取り早くデジタルを採用した京アニだが、今回は浅い被写界深度の表現を駆使してきたあたりが「さすが京アニ。他で出来ることでウチで出来ないことは無いとでもいいたそうだ」など思ってしまった。(嫌みではありませんよ)
さて、演出についても1期とは違い、風景の描写が一気に増えて最終回に向けて話が収束していく感覚が上手く表現されていた。
季節感の表現も凝っている。(光の扱い方も非常に美しいデジタル処理がされている)
ギャグのパワーは相変わらず弱いが、この作品の本質はそこでない。
いちばん見せるべきは女の子そのものなのだ。
この作品をみて感じたことは「女の子っぽい」ということ。それにつきる。
世間では萌えアニメに分類されているが、これはむしろ女の子アニメだ。
やはりメインの作り手が女性だからだろう。
女性の視点から「可愛いっていうのはこういうことだよね」と同意を求められているような感じ。
山田尚子監督がコンテを切った後期OPをよく見て欲しい。
キャラクターたちはポーズをとって、ふざけて笑い、歌って踊っている。
そこに男の目を通してみた媚びが一切無い。
箸が転んでもおかしい年頃の、なんでも共有したい、なんでも笑い合いたい、そういった単純で可愛らしい「フツーの女の子たち」が描かれている。
「けいおん!!」はそういったフツーの女の子たちの高校生活を切り取った、フツーの青春物語である。
そして青春物語というのは普通に切なさを伴う物なのである。
私たちは梓の目を通して卒業していく唯たちを見送り、さわ子先生の視線を通して自らの青春時代を思い返す。
私たちは女の子の青春の1ページが過ぎていくのを愛おしく思うのである。