蓬(Yomogi) さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
タイトルなし
凄い、素晴らしい。今期で一二を争う完成度。
元々の原作も繊細な作風だと思うが、今回のアニメは極上の仕上がりだった。
あおきえい監督は前作の喰霊ー零ーの際、今後が楽しみな監督だと感じていたけれど。
アクション以外も実に器用にこなす!これは凄い!
今作の主人公は男の子ではあるが、完全に少女漫画の文法で描かれている。
登場人物の感情の機微を見事に描きだしていた。
作画は完璧、特に彩色についてはエアブラシを多用した斬新なもので作品世界を完全に構築していた。
また色指定についても淡く色あせた色彩をデリケートに配置しており、まるで懐かしい記憶の中に紛れ込んだようですらある。
また演技については主人公の似鳥くんを演じた畠山航輔は一聴に値する。
変声期まえのうわずったような揺らぎのある声質に、女の子とも男の子とも取れないふわふわした演技。
この作品の配役は全体的に落ち着いたリアリティのある演技を要求されたと思う。
音響監督は作品の方向性をよく把握していたと思う。
一番良く感じたのは時間のコントロールだと思う。
キャラクタは派手な演技は全くしないのだが、そのかわり瞬きを沢山する。
繊細な表情と瞬き、それに空間を満たすような情緒的な音楽。
全てがあいまって泣きたくなるような空気感を作り出していた。
思春期って確かにこういう感じだった。
不器用で些細なことに本気で悩んで。
二度と経験できないからこそ愛おしい。
あおきえい監督の卓越したセンスを思い知らされる傑作だった。