タマランチ会長 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
いろいろ深読みすると楽しめるスルメのような作品
登場人物の恋愛模様は言うに及ばず素晴らしいですので、私は他のことについて書いていきます。
{netabare}私の田舎の地方中心都市では、大人も子供も周辺の村々の人々を「ザイゴ」と呼んで蔑んでいました。今はそれは間違っていたことも知っていますので、序盤の光と同級生のやり取りを見ていて、胸が痛みました。自分にとって、海村と陸の確執は、作中で解決してほしい問題でした。
作中では、海村と陸の間に生まれた子はエナを失うという設定でした。もろ過疎化を象徴しており、この問題の根深さが見えます。最初のお舟引きに向けて、まずは若い世代の光たちが打ち解け、それに影響されるように大人たちも打ち解けていきました。そこまでの流れが実に自然で、この問題の解決を願っていた自分としては、カタルシスを感じました。後半は、紡や美海ら海村の血を引く者たちにエナが出現しはじめます。海村と陸との関係が対等になりました。最終回、眠りから覚めた海村の人たちが陸の人たちと再会するシーンは、実に感動的でした。
光とまなかは海村同士のカップルで、変わらない人たちを象徴しています。紡とチサキ、カナメとさゆは海村と陸のカップルで、新しい時代を象徴しています。美海は、好きな人のために一途な思いを貫きぬき通し、妬みもやっかみもなく、とてもさわやかでした。 {/netabare}
ぬくみ雪の描写は、薄い板状で、明らかに実際の雪とは違う感じがします。これはデトリタスのイメージと重なります。作中では、人々の想いがデトリタスとなって海に漂っているとありました。温み雪は、雪なのに、ぬくみ雪→温み雪のように、作品世界の温かな雰囲気を演出していました。
海中の描写について。地上と同じようにご飯を食べたりみそ汁をすすったりするのに、時々キックで二階に上がったり、海中を泳いだりします。水の抵抗や比重を無視した振る舞いをしていたかと思うと、突然思い出したかのように実際の海中と同じようにふるまう。違和感を感じました。
OPはRey、EDはやなぎなぎ。これは「あの夏」の組み合わせです。2クール目のOP絵コンテは長井龍雪。明らかに意識しています。私はあの夏はものすごく好きな作品ですので、うれしいです。
日本人が目を背けていたくなるような心の傷に踏み込んだ作品だと思います。設定などかなり象徴的で、いろいろと考えるとスルメのように味が出てきて、楽しめます。