「もののけ姫(アニメ映画)」

総合得点
89.8
感想・評価
2052
棚に入れた
13330
ランキング
72
★★★★★ 4.2 (2052)
物語
4.2
作画
4.3
声優
3.9
音楽
4.2
キャラ
4.1

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ネタバレ

無毒蠍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

スタジオジブリの傑作!日本が世界を魅了できる、数少ないアニメ作品の一つだと思います。ジブリが「美女と野獣」をリメイクしたかのような世界観が素敵です。

むかし、この国は深い森におおわれ、そこには太古からの神々がすんでいた。

人間から蹂躙され「タタリ神」と化した森の主に
死の呪いをあたえられた少年アシタカが西の国へ赴き、
人と人、獣と獣、人と獣…それぞれ共生できる道を
勇気ある行動力と揺らぐことのない信念によって指し示していく物語です。

今まで観てきたジブリ作品の中で最も幻想的で少しグロくも一番面白い作品でした。
人の腕が千切れたり今までのジブリではあまり見ない凄惨な描写もありますが
その描写が「もののけ姫」という作品内での現実を教えてくれてます。
幻想的な世界観の美しさとそこで暮らす者たちの醜さとのコントラストが面白い。

ジブリ作品の中では珍しい男性主人公のアシタカ。
主人公役の声優さんは風の谷のナウシカでアスベルをやってた方です。
アスベルのころに比べると成長が著しいですね。

このアシタカという少年はその身に死の呪いを宿しながらも絶望することはありません。
なぜ西の森で暮らしていたはずの主が「タタリ神」になったのか…
どうして自分たちの里までやってきたのか…
なぜそこまで人間を憎んでいたのか…西の国で何があったのか…
それらの原因を右腕に「タタリ神」の呪いと
憎しみを宿したアシタカは探っていきます。
何をしたところでアシタカが死ぬことに変わりはないのかもしれませんが
それでもアシタカは見極めたかったんですよね…
森の主を殺めた責任と主の憎しみを受け継いだがゆえの行動なのかもしれません。

内容はシンプルながら奥が深い。
この世界で暮らしてるもの同士の争いと憎しみを描写しつつも
その世界にある、ほんの少しの優しさも描かれてます。
狂気に満ちた世界で自分を見失うことのないアシタカが
作中で魅力を存分に発揮し、
今までにないジブリ作品としての基盤をつくってます。
なかでも中盤でタタラの民からサンを救出するシーンのアシタカは
本当にかっこよく、作中屈指の名シーンだと思ってます。
他にもモロとの掛け合いシーンは有名ですし、
侍との戦いのとき相手が射ってきた矢を素手で止め、
自分の矢として射る姿もカッコよかったですね。
そんな再利用ありかよ、とw
何気に侍のセリフでアシタカの「押し通る!」に対して
「こいやあああ!」と言ったのが好き(笑)
あの侍のセリフはかっこよかったw無駄にやる気になってる侍w
こんな感じで非常に名シーン名台詞を多く生み出してるキャラクター、作品なんですよ。
それはアシタカの存在に限らず、サンなど他のキャラクターもそうですし、
もののけ姫という作品を構築する世界観がそうさせてるんだと思います。
端正な顔立ちとは裏腹にその身に呪いを宿し、
その呪いを鬼の形相で封じ込める姿は
さしずめ「美女と野獣」でいうところの野獣かな。
ジブリの三大男性キャラクターといえばムスカ、マルコ、アシタカだね!

物語のタイトルにもなってる「もののけ姫」のサン。
モロに恐れをなした人間がモロの気をひくために捨ててった人間の子供。
犬神モロに娘として育てられ、いつからか「もののけ姫」と呼ばれるようになった。
獣に育てられただけあって身体能力はすさまじく並の人間のそれではありません。
でもしょせん15歳の少女なのか知恵を使う人間の前では厳しい場面が多いです。
この作品は獣が徒党を組んで人間を襲ったり獣の愚直さ荒々しさを描写してますが、
それ以上に人間の狡猾さと恐ろしさを描いた作品でもあるんです。
人間から見た人間の醜さと獣から見た人間の恐ろしさを
それぞれの視点から楽しむことのできる稀有な作品ですよね。
サンもそんな人間を毛嫌いし森を蹂躙するエボシを終始殺そうと狙ってました。
大嫌いなはずの人間アシタカに命を救われ戸惑うサン…
「生きろ…そなたは美しい」
そんな事まで言われさらに困惑(笑)
そしてサンはアシタカを生かしました。
モロはサンについて「哀れで醜い可愛い我が娘」と言ってましたが
そこに「優しい」も加えておいてほしいかな。
共生する道への第一歩を踏み出したのは何気にサンが一番最初だったかもしれません。
「美女と野獣」でいうところの美女…「そなたは美しい」
アシタカの一言がすべて物語ってますね!

「アシタカは好きだ、でも人間を許すことはできない」
当然です、この言葉こそがサンが人間である証明な気がしてならない。

この作品の脅威として描かれてる人間の筆頭がエボシ様。
女性キャラなんですが女性キャラクター独特の怖さというものがあり、
印象的なキャラでした。
力強く、たくましい女性が多く登場するんですが
女性が戦う力をもったらいかに恐ろしいか実感。
男の存在が霞むどころか必要性すら感じなくなります(汗)
人間が住みやすい環境をつくりだすために
邪魔な存在を根こそぎ排除してってる女帝。
タタラの民からの信頼はあついが物語が進むにつれ自分を見失ってるように感じました。
最後はモロに片腕を噛み千切られそれまでの行いの代償を支払いました。
絶命したかのように思えたモロが最後の最後で一矢報いた形になりましたね。
最後はアシタカをタタラに迎え一からやり直すそうです。
アシタカが側にいるならもう大丈夫だよね、きっと。

人と獣との共生の前に
まず人と人との共生から始めるという良い終わり方だったと思います。

「いや参った参った。馬鹿には勝てん。」
アシタカの無鉄砲さにしてやられたジコ坊の言葉。
チャンチャン♪というSEが聴こえてきそうなオチのセリフです(笑)
そう、これだけカッコいいアシタカですが馬鹿だったんですよ。
最初から最後まで馬鹿みたいに共生を訴え続けてきたアシタカ大勝利のラストでした。
しまいには呪いまで消えてくれて馬鹿ってすごいのね…

視聴したのはブルーレイ版です。
まぁジブリは大抵ブルーレイで観てます。
とりわけ「もののけ姫」という作品は古来の日本を舞台にしてるかのような
世界観で木々や水のせせらぎ一つとっても美しくブルーレイで映えます。
こういった美しい日本の在り方を描写した作品は
日本が世界に誇れる数少ないアニメーションの一つだと思ってます。
「魔女の宅急便」などを観て海外の街並みに憧れる日本人がいるように
「もののけ姫」を観て日本の世界観に魅了される外国人もいると思うんです。
まさにこの作品こそジャパンアニメーションと呼ぶに相応しい内容だったと思います!

最後に心のオアシス、トキさんの好きなセリフ。
「生きてりゃなんとかなる!」

【A+85点】

投稿 : 2014/04/14
閲覧 : 336
サンキュー:

6

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