無毒蠍 さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
幼くして戦争孤児になった兄妹の物語。戦争を描いてハッピーエンドなんてありえない。それを思い知らせてくれる作品でした。
小学生のころ授業の一環か何かでこの作品を流してたような気がするけど、
当時の自分はよく泣かなかったなとw
おそらく適当にしか観てなかったんでしょうが成人済みの今現在の私は始まって3分で泣きました。
ちょうどタイトルが表示されるくらいのところですw
自分でもよくわからないけど泣いちゃいましたなぁ…
やはり実体験をベースにした作品ということもあって
今の自分の生活と何気なしに比較したりして、
どれだけ今の自分が恵まれており運がいいのか思い知らされるんですよ。
本当に生まれた時代が良かっただけだよなぁ、と…
戦争ではその国で暮らしてる人すべてが被害者ですが
この作品はそういった人たちの中でも
二人のとある兄妹にスポットを当て作品を描いています。
戦争を描いてるというよりは戦争孤児を描いてる感じです。
物語はいきなり空襲シーンから始まり、母、清太、節子と非難していくんですが
清太&節子は母と別で非難することになるんです。
ところが再会するころには母は被災しており包帯ぐるぐる巻きで
母だと言われなければわからない状態でした。
この時点で14歳と4歳の兄妹が背負うにはあまりにも重たい人生ですよね…
状態が状態なだけに節子には内緒にしておきそのまま母は亡くなります。
そのあと親戚の家に預けられるんですが最初は良好な関係を築けてたんですよ。
まぁ時代も時代だし戦時中なだけに仕方ないでしょうが
途中から働かざる者食うべからずみたいなことを言われるんです。
他の作品だったら「そりゃそうだ」くらいには思えたかもしれませんが
この兄妹にその言葉はあまりにも切ない…
親戚の叔母さんはお国のために皆働いてるのに清太さんは…みたいなことを言うんですが
清太はお国のためにではなく節子のために尽くしてるんです。
どんなに辛くても節子の前じゃ泣かなかったし出来る限り笑ってました。
そして兄の笑顔に応えるかのように節子も笑ってくれるのです。
その笑顔でまた清太は今日も精一杯生きていこうと思えてたんだと思います。
節子を食わしていくために畑荒らしまでやるし空襲で人がいなくなったスキに空き巣までやります。
いつしか清太は空襲を歓迎するようになってたんですよ…
そんな無我夢中で節子を守ってきた清太が
終盤で初めて涙した日には僕まで泣いてしまうというものです。
途中から親戚の叔母さんに嫌味を言われて親戚宅を二人は出ますが、
ここで出ていかなければまた違ってたのかもしれませんね。
観てて思ったのは清太は愛想がないです。
戦争孤児になった二人を家においてくれて飯まで食わせてもらってるのに
感謝や謝罪のような言葉が清太からは出てきません。
居心地が悪いのか叔母さんたちを前にすると萎縮してる感じが顕著にあらわれてるんです。
でもここらへんは年頃の思春期の子供ということを考えたら妙にリアルに感じました。
そういった清太たちの態度が伝わったのか当初は良好だった叔母さんとの関係もギクシャクしだし、
清太は節子を連れ家を出ます。
ここが二人のターニングポイントだったのかな…
農家のオジサンも言ってましたが謝って家におかせてもらったほうがいいと…
結局戻ることはしませんでしたが…
叔母さんに嫌味を言われても働かなかったのは節子を一人にしたくなかった、
節子と離れたくなかった清太なりの想いがそこにはあったように感じます。
にしても戦時中にも、というか戦時中だからこそというかニートはやっぱり非難されるのね(笑)
こんな時代だからこそ働かなきゃいかんのよね、きっと。
この作品の魅力は清太と節子の微笑ましい兄妹愛にあるとおもいます。
ニートと非難されても節子に寄り添う清太と4歳児らしい能天気な言動と行動で元気をくれる節子。
そんな二人の関係性があったからこそ随所で涙しちゃうんだと思います。
叔母さんに母の形見である着物を米にしたらどうかと言われ、
米が食べたい清太と母との想い出にすがる節子…
現実的な判断が下せる年齢の清太と割り切った考えをするのはあまりにも幼すぎる節子…
節子はそれによっていじけてしまうのですが白米を食べて機嫌をなおすあたりやっぱ4歳児だなぁ(笑)
そんな二人をずっと見てきてるから節子が日に日に弱っていく姿に号泣…
あれほど節子から離れず寄り添っていた清太も
病気の節子に栄養つけさせるために一人で出かけることが多くなるんですよ。
もう節子のどこにも行かないでほしいという言葉は胸に刺さりました。
だって清太がやってたのは空襲に乗じた空き巣ですからね。
二人がこうなってしまったのもすべては戦争のせいなのに
敵軍にむかって「やれ!やれー!」は切なすぎるよ…
節子はスイカを清太に一口食べさせてもらい「兄ちゃん…おおきに」と言って永眠するのですが
いままで節子のために頑張ってきた清太だからこそ節子の最後のセリフというのは、
とても感慨深いというか報われるものがありますよね。
清太の愛情をちゃんと理解してくれてたからこそのセリフだと思います。
私にも妹がいるのですが妹はもちろん人に優しくしてあげたいとそう思える作品でした。
こういった作品は後世まで残ってほしいですね。
【A80点】