ギータ さんの感想・評価

4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

ネタとしても真面目な話としても楽しめた作品でした

私がラノベアニメに求めたいもの+αという、求めたもの以上のものを見せてくれた作品でした。
前期に放映されたアウトブレイク・カンパニーの上位互換かなと。

【短い感想】
強烈なキャラ、強烈な展開、強烈なパロネタ、数々の暴挙。
ネタアニメと認定しても全く問題ないアニメではないでしょうか。
だってさ…{netabare}ベッキーにゆかたん、女体盛り、ポニーテールの四十、熱いパンツ論議、も○○け姫、アナルBB{/netabare}とか、これで「このアニメはネタアニメじゃない」って言う方が無理な話（笑）
まぁ正直１話を見たときは「このアニメ…やってしまったなぁ…」と思いましたよ。
あれを岐阜県のお年寄りの人とかが見たんですよね。
まぁ２話のパンツネタがツボに入って、このアニメにだんだん慣れてきて、最終的にはあらゆるネタに笑って視聴できるようになりました。
今期アニメは特にパロネタ豊富なアニメが多かったですね。
ラノベってパロネタを入れなくちゃいけないのかと誤解してしまうほど、ラノベ作品はパロを扱う作品が多い印象です。

ネタアニメには変わりないと思いますが、この作品によってネタアニメの印象が大きく変わりました。
のうりんというタイトルだけあって、農業高校の出来事中心に物語が進んでいくわけですが、これだけのネタアニメなのに真面目に主張するシーンもあったりするんですよね。
ネタアニメって真面目な話、シリアスな話を持ってきても白けてしまうことが多いんですよ。
話の落差、温度差が大きすぎる訳ですからね。
ただ、のうりんはそういう真面目なシーンもわりと自然に視聴できたと思います。
例を挙げると、{netabare}連作障害とりんごの笑顔を絡めたトマト畑の話、マネー金上の投資の話、雨の中のトマト栽培{/netabare}等は感心し、いい話だなーと素直に思いました。
ネタアニメでは真面目な話が入ることを諦めていたし、しないで欲しいと思っていました。
やるとしても、ロウきゅーぶのようにストーリーの軸を作るくらいにとどめて欲しいと思ってました。
ただ、のうりんは違いましたね。
私がアニメを見る上で影響を受けた作品として、ロウきゅーぶ、俺ガイルがありましたが、新たにのうりんが加わりました。

まだ続きがあるはずですし、私としても気になる展開があるので、２期に期待したいです。


【長い感想】
〇ラノベの宿命
{netabare}恐らくですが、この作品で一番やりたかったことは農業だと思うんですよ。
実際、真面目に農業について語っているシーンはかなり面白かったんですよ。
ただ、農業一本でラノベとして戦っていけるかと言ったら無理なんですよね。
実際、ベッキー目当てにこの作品見る人とかかなりいるはずです。
「もっと農業見せろよ」という意見もたまに耳にしますが、それはかなり少数意見のはず。
ラノベ作品として、さらには強烈なキャラと描写をしておきながら、上手く農業の話を展開したのは本当に凄いと思います。
前述しましたが、ネタアニメの印象が本当に変わりました。
これについては原作者さんとスタッフを心から賞賛したいなと。
銀の匙ほどはいかないかもしれませんが、この作品を見て、少しでも農業のことについて考えた人がいれば、さらに制作した価値が上がるのではないかなと思います。
たとえベッキー目当て、ネタ目当てだとしても、農業の描写を見て「ヘー」と思えれば、農業について真面目に描いた甲斐があるんじゃないかなと思います。{/netabare}


〇惜しかったこと
{netabare}①木下林檎
憂鬱な時期に耕作が贈っていた野菜を食べてこの味に感動し、またそれに同封されていたファンレター（実際は農が書いていた）で田茂農林の存在を知って突然引退。2年生の春に転入し、青田寮で耕作達と生活を共にすることになった。（wikipediaより）
今更ですが…休業じゃなくて引退してたのか！！？？
どうしよう…しゃーない、引退したということで気になったことを書きます。
今後の展開に書かれているかもしれませんが、彼女はなぜアイドルになったのかなーと。
せっかくアイドルという設定から始めたなら、アイドルについての描写をもう少し詳しくして欲しかった。
これはせかつよの二の舞に近いです。
ゆかたん王国とか、宇宙一可愛いとか本人の口から言ったシーンはネタ的にも面白いですが、アイドル描写として非常に意味があるシーンだったと思うし、こういう描写をもっとして欲しかったです。
アイドルを目指した経緯、アイドルをして嬉しかったこと、また復帰する気はないのかなど、もっと掘り下げて欲しかったなーと。
耕作がファンだとか、たくさんのネタを供給できるとか、これだけに留まるのはもったいないです。


②畑耕作
後半に出てきた農業失敗の話が、こういう言葉で評価するべきではないんですが、かなり面白いんですよ。
農業の大変さって、関わってない人からしたら、時給換算にしたらめっちゃ安いとか、一日中作業するのが大変とか、経営を自分たちでやるのは大変とかそのあたりのイメージじゃないかなと。
そういうイメージがありながらも、農業に憧れを持ったり、農家になってみたいという人もいたりするはずです。
農村では人が減っていく一方であるため、なんとか農家を増やそうと明るく農業についてアピールしているはずです。
だからこそ、農業の失敗とか、本当の問題点についてはあまり知られてないはずです。
それは現場に出なければわからないことが多いし、宣伝にそういうことを言うわけにはいかないからです。
同クール放送の銀の匙２期、そして今回ののうりんではそういう現実的で思わず目をそらしたくなるような問題を扱っています。
だから、耕作の農業失敗についての話はかなり興味深かったし、もっと多くの人が知るべきだと思ったんです。
農家を増やしたいのはどこの農村でも同じだと思いますが、現実問題を知らない中で安易に農家を目指して失敗する人は出て欲しくないなと。
さすがにそこまで安易な人はいないかもしれませんが、農業に携わってない人も知るべき現実だと私は思います。
こういうリスクの中で農家の人たちは食料を供給しているのだということを自覚するべきかなと。

長々と書いてしまったんですが、ここまでは賞賛、ここからが惜しいと思っていることです。
耕作が農業についてどう思っているかという描写が前半にほぼ無かったこと、これが痛かったです。
だから、後半この話の展開になって少し混乱しました。
耕作は農業を誇りに思っているのか、農業が好きなのか、嫌いなのか。
前半を見る限りでは、農業を誇りに思っていて、好きでしょうがないという印象だったんですよ。
ただ、後半の幼少時代の失敗を見てしまうと、前半のアレはなんだったんだ？と思ってしまうわけですよ。
トラウマを乗り越えて、答えを見つけた上での前半の描写ならいいんですよ。
そうじゃないわけですから。
どうするべきだったかといえば、やっぱり伏線を少しずつまいとくべきだったと思います。
例えば、雨の中でのトマト栽培、あれも農業をやっている上でうまくいかなかったことの１つのはずです。
あそこでは林檎だけが落ち込んでいる描写でしたが、耕作にも意味深、ワケありな描写を設けてあげても良かったはずです。
こういう伏線の扱い方については、アニメアイドルマスターが本当に上手い。
あの千早のストーリーくらいやってほしいとは言いませんが、後半にあの展開をするなら、前半のうちにそれなりの伏線描写をして欲しかったなと。
それがあるとないでは、話の納得度やキャラへの感情移入具合が全く違うはずです。
特に、扱っていた話はかなり興味深い内容だっただけにもったいないなぁと。{/netabare}


【最後に】
何度も言いますが、このアニメによってネタアニメの印象が大きく変わりました。
だからといって、ネタアニメすべてがのうりんと同じように展開出来るわけではないはずです。
のうりんが今回のように展開出来たのは、作者が本気で農業について考えてるからじゃないかなと思います。
のうりんは農業については小ネタ程度に描写しても農業アニメとして展開出来ると思います。
それだけでなく、真面目に農業の問題や現実を主張してきました。
これについては、作者の農業について伝えたいと思う気持ちが伝わってくるようでした。

もちろんベッキーはじめとしたネタの嵐も面白かったんですが、そのネタだらけの中で真面目な展開を上手くこなしたことが衝撃的で、今回はそのことを中心に感想を書きました。
真面目な話は銀の匙で十分と思ってましたが、本当に思わぬ誤算です。
良い作品に巡り会えたなぁと思います。