セレナーデ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
言葉でなく、生き様
自分の中で傑作と呼べる稀少なアニメのひとつ。水曜どうでしょうで大泉洋のやったアニメ声優の話題のとき、これの名前も挙がってたような。どうだったかな。
それはいいとして、ざっくり感想を言うと、ロードレースというゲームの面白さと人間ドラマを、よく小一時間でこれだけ力強く描ききったな、と。
子供の頃、親戚のおっちゃんがマラソンの中継を観てるのを見て、一体こんなのの何が面白いんだろうと子供ながらに思ってたんだけど、競技は違うけど本作を観た時その面白さがちょっと分かった気がした。門外漢からは内容の分かりにくい長丁場のレース展開を、綿密な取材のもと娯楽性に富んだシナリオに開花させてくれています。
でもってドラマ部分に関しては、全体の構成とラストが秀逸。
{netabare}兵役中の間に、兄貴に恋人を奪われ、バイクの才能においても兄貴の方が上と囁かれていたけど、だからこそ、せめて自分が兄貴から最初に奪ったもの(バイク)で、兄貴に勝ってやろう、と。ラストの敬礼には、そんな過去の悔しさと決意へ捧げているものと感じられると同時に、そのペペの過去があったからこそ、単に地元で優勝したという事実でだけではない大きな意義が伝わってきます。{/netabare}
そんなペペのロードレースに賭ける想いが徐々に紐解かれていく脚本が、ラストの余韻を一層引き立ててくれるのです。
それを言葉ではなく、生き様で描ききってくれたところに、本作の魅力は帰結するのではないかと。
しいて不満があるとすれば、レース展開にもう一山欲しかったと思わないでもない。というのも「起承転」までは順調なのですが、「結」の部分は特になにかプロットを挟んでいるわけではないんですね。中盤のトラブル(転)の引きからどう盛り上がるのだろうと観ていたら、回想シーンの感傷的な雰囲気のドサクサにまぎれてクライマックスにうやむや突入してしまっていて、今思うとこれは、ちょっと肩透かしだったかもな、と。
しかしそれを差し引いてもこれは、プロットもシンプルで、説教や啓蒙もない、熱く、切なく、味わい深い作品。
すなわち傑作なのでした。