STONE さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
残酷な世界における、暴力による生存戦略
原作は既読。
まずアニメ化によるメリットが2つあった。
あくまで私感だが、原作の絵って結構汚い印象があり、特に初期はキャラが判りにくかったり
した。それがアニメ化によって見やすくなったのが嬉しい。
この作品の見所の一つに、立体起動装置を使った人間と巨人との戦いがあるが、立体起動
装置の動きは動画の方が映えるものであり、これがアニメ化によってスピーディーで迫力のある
映像になった。この部分だけでも見る価値があるように思える。
「この世界は残酷だ」
「何かを犠牲にしなければ、何かを変えることはできない」
作中で語られる言葉は印象的なものが多いが、展開や映像もこの言葉にぶれることなく、
見事に描かれている。
前者に関しては生存のための暴力を肯定しなければならない世界観を始め、随所随所に
無慈悲であったり、非情だったりする描写があるが、こうした映像的なものだけでなく、中盤の
巨大樹の森におけるリヴァイ班の末路など、他作品では正解とされることが多い、仲間を信じた
結果などの展開の部分なども残酷さを感じる。
後者に関してはエレン・イェーガーを始めとする個人的問題から、壁の中の人類世界という
マクロ的なものまで含めてで、これまた他作品でも見られるような敵を倒し、仲間を救い、更に
自己も成長するようないいとこどりは許されない。
序盤の巨人による侵攻は人類の絶望感がよく描かれている。映像的なものもさることながら、
巨人を倒そうとしていたハンネスが巨人と対峙した時に、巨人との戦いを放棄したところや、
エレンやミカサを逃がした母が最後の最後には「行かないで」と発してしまうところなど、
兵士としての信念や母の愛までも、恐怖の前には覆ってしまうところなど、精神的な意味での
恐怖感もうまく映像化されている。
序盤で重要な脇役が死んでしまう作品はそれなりにあるが、主人公が死んでしまうという
展開はあまり例がなく、初見の人はかなりインパクトがあったのでは?。
まあ、この後に予想外の展開があり、そこから先は怪獣大決戦?のような世界になって
いくが、序盤から想像される「身体能力が遙かに劣る人間がいかにしても巨人に対峙して
いくか?」といった路線を期待していた人なんかはがっかりしそう。
後半からは「女型の巨人は誰か?」、「巨人化した人間達の目的は?」といったミステリー
要素が付加され、ドラマ的な面白さは増した印象。前者は判明するが、後者は本作品においては
曖昧なままで、これは2期に期待といったところか。
女型の巨人の正体に関しては、改めて序盤からのアニ・レオンハートの言動や行動を見直すと
なかなか興味深いものがある。他の知性ある巨人に関してはここでは書かないけど。
キャラもかなり印象的な人物が多く、いちいち取り上げていくときりがないので、ここでは
書かないが、やはり際立って印象的だったのはミカサ・アッカーマン。
彼女のエレンを偏愛するあまりの言動や行動など、本人はいたって真面目なのだろうが、
端から見ているとシュールな笑いになってしまうところもしばしば。
このヤンデレ化は話が進むにつれて激しくなる一方といった感じで、例えばエレンがアニを
気に掛けるところなどは単に同期としてのものなのだろうが、ミカサはそれ以上のものと捉えて
いるようで、アニに対する態度などは、完全にエレンに近づこうとする女を排除するといった
もの。
基本シリアスな作品だが、その実コメディ的要素も多分にある。ただ、トーンを変えずに
淡々とそれをやられるものだから、かなりシュールなものになってしまい、別の意味での笑いが
生まれる感じ。
作画、展開など回によってはムラがあったが、総じて凄い作品であったとは思う。