aaa6841 さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.0
状態:観終わった
劇的な第1話から肩透かしの本編
それっぽい組織に所属する、それっぽい制服を着た、それっぽい主人公とヒロインが、それっぽい仲間達と、それっぽい乗り物に乗り、それっぽい武器を使って、それっぽい幽霊を撃退する。
そんな「それっぽい世界感」で、硬派な感じの幽霊退治モノなのかと思って最初は見ていた。
すると、第1話終盤で、ヒロイン含め仲間達全員が、1人の黒いセーラー服女に瞬殺されるもんだから、普通に驚いたのだが、気を取り直して、「なるほどね。この壮絶な状況から主人公だけが一人生き残って、仲間の死を胸に強く生きていくのね」なんて考えていたら、サクッと首を掻っ捌かれて主人公死亡。
ここで、彼が主人公ではないことに気がついた。
その時には、このアニメに物凄く引き込まれたし、最高の引きで第1話が終わったなと思った。
何たって、その第1話終了時点では、色々と妄想が捗る状況だったからである。
この女は敵なのか味方なのか。味方だとすれば主人公なのか。こんな残虐な女が主人公でいいのか。なんかこの女、凄くエロいです。なぜ善良そうな人間を容赦なく殺すのか。実は、既に偽主人公と仲間達は幽霊にとり付かれていたとかで、それを理由に排除したのだろうか。いやむしろ主人公が幽霊側なのだろうか。それとも、国家機関でも幽霊側でもない第三者の視点が存在するのか。
等々といった感じで、色んな妄想と興奮が押し寄せていた。
しかし、そんな淡い妄想は軽く葬られ、よくある勧善懲悪で、「幽霊を倒す側」と「幽霊側」しか存在せず、女はその行動の通り敵側で、普通に正義っぽい主人公が他にいて、という感じで、およそ考えられる「普通」をそのままいったような展開が待っていた。
要は、第1話は完全に「オマケ」でしかなかったわけだ。
特に肩透かしだったのが、真の主人公(土宮神楽)とその仲間達の立ち位置が、第1話で全滅したチームと全く同じであったこと。
武器が個性的で、多少キャラが濃いという微妙な差があるだけで、省庁下の組織であり、少数精鋭で、幽霊が肉眼で見えて、街がピンチなところに颯爽と現れて敵を倒すといったように、第1話の奴らとやっていることが全く一緒。
単に、後から登場した奴らのほうが強いというだけのことでしかない。
にもかかわらず、真打登場とばかりに現れて、敵をなぎ倒していく。
いや、その演出は第1話で見たから。
この展開のせいで第1話の存在意義が消失した。
では、肝心の第2話から始まる本編について考える。
黒いセーラー服姿の「諫山黄泉」は、第1話の振る舞い通り、敵側の人間だったわけだが、一応それまでのいきさつには何か事情があったようだ。
最初は、黄泉も、神楽や仲間達と一緒に幽霊退治に勤しんでいたが、あるきっかけから神楽達と仲違いして、敵対勢力に下り、最終的に、親しい相手(神楽)との殺し合いになるが、何やらどちらもそれを望んでいないみたいな空気になりつつ、最後は悲劇の結末を迎える。
まぁ、そんな「感動の物語」にしたいんだなっていうのは伝わってくる。
では、何故そのような殺し合う状況になったのか。
「感動を誘う悲劇の結末」を迎えるために、ここはかなり重要な部分であるはずだ。
で、よくよく「2人が殺し合うことになった理由」を考えてみたのだが、これが特に見当たらない。
「目立った特徴がないから見た目を子供にしてみました」という感じの安っぽいラスボス風強敵に、黄泉が理不尽に再起不能にさせられ、入院生活を強いられる。
そこに神楽が見舞いにやってきて、諫山冥の死について「黄泉は憎しみで人を殺したりなんかしない」なんて言って黄泉を妄信するが、黄泉自身は、そこに憎しみが混在していたのは否定できないことから、神楽の言葉を肯定するような態度はとれなかった。
それを察した神楽が泣きながら病室を飛び出していったのを見て、黄泉は何かもう色々嫌になり、自暴自棄になって殺生石を受け入れる。
一体どこに、黄泉の殺意が神楽に向かうことになる原因があったのかさっぱりわからない。
敵意を向けられ、本気で殺しにかかってきた諫山冥に対して、殺意をもって返すのはごく普通だろうし、そこに多少積年の恨みが入っていたとしても不思議ではない。
再起不能の寝たきり状態になって、婚約も破棄されて、殺人の疑いもかけられて、みたいな状況になれば殺生石とやらを受け入れてしまうのもわかる。
殺さなくてもいいだろうとは思うが、今までいびられ続けてきたであろうことが伺えるため、冥の父親に対して憎しみがあったことも理解できる。
で、そこからどういう思考を巡って、妹みたいに可愛がってきた神楽を殺すという結論に至るのだろうか。全く意味がわからない。
これでは、ただのサイコパス女である。
なんてことを考えながら見ていると、突然、「黄泉が一旦正気に戻った」みたいな演出が入る。
今までの行為は、全て石に操られていただけのことらしい。
冥の父親を殺したのも、神楽の父親を殺そうとしたのも、室長と二階堂桐を殺そうとしたのも、桜庭一騎を殺したのも、神楽を殺そうとするのも、ついでに第1話に出てきた奴らを皆殺しにしたのも、ぜーーんぶ石に操られてやっちゃったことらしい。
憎しみやら恨みやら嫉妬やら、そういう負の感情がどうとかいう件は全く関係なかったのである。
「こんな正義感溢れる人間でも、心の奥底には暗い感情がありますよ~」みたいな場面は何のためにあったのだろうか。
その上、「石に操られている時」と「正気でいる時」の変化が、まるでスイッチをオンオフしているような感じで、瞬時に人格が切り替わるらしく、殺戮を望む石の意志に打ち勝とうとするような場面もない。
抗った感-零-。
そんなこんなで、最終的に、黄泉は神楽に殺されるという結末を迎える。
まとめると、寝たきり入院生活から自暴自棄になったことで、殺生石を受け入れるという禁忌を犯し、その結果、仲間を殺しまくったけど、それは石に操られていただけのことで、自分の意思ではなかったのだが、最終話における神楽との決戦のときだけ、「愛・友情・絆で乗り越えたぜ」みたいな感じで、石の洗脳から解放され、死を受け入れられた、ということになる。
よかったね。