退会済のユーザー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
徹底された管理社会の中で一見エゴの考え方見れる槙島の考えははたしてエゴなのか
踊る大捜査で監督を務めた本広克行が、自らのアニメ作品を作りたいと、Production I.Gのプロデューサーに話した事がきっかけとなり、アニメ制作監督の塩谷直義と共に本計画が始まった。
さらに『まどマギ』や『fate/zero』などで知られる虚淵玄をストーリー原案として迎え、作品のフォーマットが出来上がった。
キャラクターデザインは『家庭教師ヒットマンREBORN!』でお馴染みの天野明さんが努めています。とても綺麗な絵で専門的なことは分かりませんが、私から見ると作風とマッチしていたと思います。
総監督 本広克行
監督 塩谷直義
ストーリー原案 虚淵玄
キャラクター原案 天野明
アニメーション制作 Production I.G
アニメの内容も多少グロイシーンはありますが、それが無ければサイコパスの良さを引き立てられないのでプラス要素として捉えてます。
その為、大人向けとは言えないものの青年向けの内容だと思います。
物語は刑事物かと思いきや、後半には映画のような壮大なストーリーが用意されており、ただの刑事物ではないストーリーです。
設定は、SF小説とかではありがちな設定を組み合わせたような設定ですが、それに『踊る大捜査』のような刑事物、さらに『アクション』要素も組み合わせて中々珍しい味がある作品に仕上がってます。
最近の作品はテーマ性が無いエンターテイメントに拘った作品が多いと言われますが、この作品は最近の作品の中でも深いテーマ性があると感じました。
作中の管理社会についてのテーマとして。
『良いところと悪いところ』、『今の社会を受け入れて朱が法を守ることを決断する様子』のこの二つがありますがとても深い。
私はこの部分に惚れ込みお気に入りの棚にサイコパスを放り込んだ、といっても過言ではありません。
キャラクターは、ドライクールな狡噛さん、純粋な心の持ち主常守 朱さんを中心に魅力的なキャラクターが揃ってます。
虚淵玄脚本にありがちなのがキャラクターをすぐ殺してしまうという。良いところでもあり、また悪いところあります。
このサイコパスにおいては、『しっかり殺してくれる』というのがとても良く、作品のシリアスを引き立たせるための残酷さとして、上手く機能しています。
ただ、{netabare} 縢 秀星や六合塚 弥生{/netabare}のキャラの掘り下げはもう少し前半を使い掘り下げて欲しかったです。
『2クールだから仕方ない』とは思いますが、正直あの二人はとても良いキャラだったので少しもったない気がしました。
特に前者は中盤で{netabare}殺されてしまう{/netabare}のでもう少しキャラの掘り下げをして欲しかったな、と。
また敵キャラも魅力的だ、という所も良い所ですね。
悪には悪の言い文があるということを上手く描いてくれたのは私としては良い部分でした。
『ただ悪い事した』ではなくて、『どうして悪い事をしたか』と過程の部分までしっかり描いてくれる。
そこが良かったですね。
音楽は本編の内容とマッチしていて、何回も聴き込んだ曲が多いです。
特に『名前の無い怪物』はとても残酷な雰囲気を感じる心が揺さぶれる曲です。
私は歌詞に打たれ何回も聴き込んでしまいました。
{netabare}
■管理社会の良いところと悪いところ
槙島さんの管理社会に反抗する思想は一見エゴに見えますが、私としては管理社会の悪い所をしっかりと『代弁』してくれたという所でとても素晴らしいなと感じました。
管理社会のアンチテーゼ的存在が槙島さん自身です。槙島さんは犯罪係数は計測出来ず、人を殺しても犯罪係数の数値が上がらない。
その為、犯罪を起こしたとして、執行官にドミネーターを向けられてもドミネーターが発動しない。
正に『数値で何事も決められない場合もあるよ』とサイコパスによるシビュラシステムの悪い部分ですよね。
シビュラシステムの一例として描いてくれたのがとても良かったかな、と感じます。
他にもシビュラシステムの管理社会を疑問視する台詞やシーンがありますよね。
征陸智己が『数値による捜査が正しいのか』ということを疑問視するシーンや、常守 朱犯罪係数が上がった被害者を狡噛が撃とうとしたのを庇って、パラライザーを狡噛に向けて発射したシーンなどなど。
物語の所々で、シビュラシステムによる管理社会を否定しています。
あ、槙島さんの考えが全て理屈に通ってる訳ではないですよ。
槙島さんの悪いところは管理社会に悪い部分があったとしても、それを変えるのは武力という行為では無く、もっと政治的な行為ではなければいつまでも変わらないということです。
『社会を作るのは強い者ではない、政治家だ』
私としてはこれをずっと唱えているのですが、サイコパスで例えると、槙島さんがシビュラシステムを破壊したとしても、新世界を作る事は無理なんじゃないかと思うのですよね。
シビュラシステムを破壊したとしても、それを凌ぐ社会システムを槙島さんが構築出来ますか?
確かにシビュラシステムに不満を持っている方はいます。
しかしそれを破壊してしまえば、シビュラシステムに恩恵を受けている方は困りますよね。多分、シビュラシステムが社会に貢献している割合はかなり高いと思います。
その割合を占めているシビュラシステムを破壊したら、大変な事になり、多くの人が混乱するに決まってます。
そこまでして破壊しようとするのですから、彼の考えがエゴに見えるのですよね。
終盤で、狡噛さんが槙島さんに対して槙島の考えを否定していますが、正しくその通りですよ。
シビュラシステムが悪いから何をやっても良い訳ではないんですよね。
結局の所、世の中を変えようと思ってたら国民の意思をコントロールするような政治家が必要なのですよ。
武力だけでの解決は破滅を生むだけです。
ただ
『徹底された管理社会の中で一見エゴの考え方見れる槙島の行動ははたしてエゴなのか?』
と聞かれれば答えはNOですね。
まず彼と同じような考えを抱く人がいる時点で、自分だけという考えだという事は否定されますし、しっかりとシビュラシステムによる管理社会の悪い部分をこの作品は描いています。
それに共感する人も多かったんじゃないですかね?
やはり槙島さんの考え方はエゴではなく、しっかりとした国民の反ジビュラシステムの意見の一つなのです。
管理社会を良いところと悪いところ。
良いところは前半で描かれた部分。
悪いところは槙島さん自身存在や考え。サイコパスの数値が捜査に役に立たない部部分がある。
↑しっかり世界感の良い部分と悪い部分が描かれているのが素晴らしいですね。
■今の社会を受け入れて朱が法を守ることを決断する様子
今の管理社会の悪い部分を知った後でも、朱はその社会を破壊しようとしている槙島か、今の社会で恩恵を受けている人々の選択を迫られたときに、しっかりと今の社会の方を選択しています。
刑事というのは『法を守るものだ、秩序を維持するものだ』、この大原則をしっかりを守ってますね。
反対意見もあるかもしれない、【けれど今の社会をそれを理由に破壊するのはおかしい】
↑この考え方ですね。
この時の朱の心の葛藤はかなり見ものでした。
現在の社会における善とは?悪とは?何か?
管理社会が嫌だからと言って、沢山の人を殺すのは管理社会においては悪だ。
朱はこの結論に至りましたね。
そして、狡噛さんを犯罪者にしないためにも、槙島さんを殺させない。
槙島さんの脳をジビュラシステムに取り込むことで、ジビュラシステムの進化が望めることから、槙島さんを殺さない。
ジビュラシステムの管理社会において有益な選択をします。
この選択に至るまでの葛藤が私のとっては見ものの一つでした。
■刑事物というラストに当てはめた悲しいラスト
ラストは狡噛が槙島を殺すことで終結する、という残酷ですがとても刑事物らしい良いシーンでした。
『刑事』を中心にして物語描いているなら、刑事の目的をはたすため犯罪者を取り締まなければなりませんね。刑事というのは犯罪を犯した物を取り締まる役割ですから、それが出来なければ刑事の意味がなくなりますね。
また、朱は「犯罪を犯した者はそれなりの報いを受けなければなりません」と物語の中で説いています。
この二つを突き通すなら、最後は槙島を殺さなければなりません。
きっちり最後は『殺して』くれてとても素晴らしいシーンだと思いました。
{/netabare}