よぞら さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
あたたかい冬
これは冬の物語だ。冬はつらく厳しい、というのは誰しもが知るところなのだが、『未確認で進行形』にはそれを感じさせない熱情のどよめきがある。その熱情とは、戸惑い、驚き、悲嘆、喜びであり、その多くのどれもが純真な心に起因するものである。僕の冬は『未確認』で彩られたと言ってもいい。
主人公の小紅が出会う許嫁の白哉は、字義通りに他者である。そしてこれは、自らの習慣からかけ離れて存在する他者をその距離そのままに受け入れていく工程であり、また目を逸らしてきた自分の本性にひた向きあう真摯な物語である。そのいずれも、自分にとって「未確認」であり、触れるのを躊躇われる当のものである。しかし「未確認」なものの本性が明らかになり、自分に親しいことが分かると、心はいつにない熱情を伴い、知覚できない仕方で解けていく。それは冬に埋もれた芽が雪解けにしたがって見たこともない麗らかな陽を浴びるように。
われわれは他者との接触を闇雲に拒み、自分の殻に籠もることにこだわろうとする。『未確認で進行形』はそんな臆病なわれわれの心に、本当の純真さを見つめることの喜ばしさを、胸の高鳴りを、その響きの心地よさを諭し、春の訪れのようにやさしく後押ししてくれるのである。