みかみ(みみかき) さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
安全圏から戦争を「見る」ことの戸惑い
『スプリガン』などもそうなのだが、どうもこうした、コミカルさと、軍事・戦争・マフィア的なネタが同居する感じの世界観の立ち上がり方というのは、いかにも安全圏の軍事オタが、安全圏から軍事ネタを楽しんでしまっているような匂いを感じてしまって、どこかで素直に楽しめない感覚がしてししまっていた。
本作はガンアクションとして楽しい。しかし、ただのガンアクションではなく、「マフィアの街」という、日本人の日常とは違う生活空間があり、その生活圏ならではのモラルの成立の仕方があり…といった、<マフィアの世界>の自立性を強調する。しかし、だからこそ、その世界を描きだす手口のあざとさ、はわたしにとっては、ひどく気にかかってしまう。
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それを、前提としたうえで、本作に強く興味をそそられるとすれば、そのメタ的な自己批判ぷりだ。
後半で、狙ったように放たれる「あなたは結局、安全圏」的な批判は、曖昧な主人公に対する手厳しい批判である一方で、この作品自体に対する自己批判にもなっている。
まさしく、この作品を楽しむという行為そのものが、安全圏におけるセンスを介して成立するものであるがゆえに、<危険な話を安全圏から見る>という行為を行うこと自体が醜いのだ。
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もっとも、「あなたは結局、安全圏」という批判そのものは、その言葉だけを抜き出してみれば、2chの批判みたいなところもある。「そりゃそういう批判はできるでしょうけれど…」という、気もする。とても頭の悪そうな言葉に変換すれば「平和ボケ乙!」という、批判でもありうるのだ。平和ボケ乙!に対する批判は「戦争ボケ乙!」あるいは「戦争厨乙!」みたいな、ごく不毛な論争になる。
基本的に、平和な人間が、単に「平和である」ということから生じる感覚そのものに対して「そもそも、平和な人間の感覚などはだめである」ということは、できない。それは、さまざまな日常の存在を、認めないだけの単細胞そのものだ。
ただし、「平和」のリアリティが「戦争」のリアリティからすれば、どうしようもなく、醜くあらわれてしまう局面が在ることは、それはそれで事実だ。
本作のなかで、平和なリアリティに対する批判が放たれるその瞬間が、作中そのものでは、そこまでしっかりと、その現象の瞬間をとらえている、とは言い難いシーンもある。丁寧には描かれていはいても、2ch的な嫌味と大して変わらない駄作である、と思う瞬間もある。特に前半。
しかしながら、後半で放たれる批判は、その現象を、あまりにも見事にとらえている。その意味では本作は、見事な批判力も有している、と思う。
わたしは本作を、もろ手をあげてほめる人が正直、好きになれない。本作をもろ手をあげてほめるひとは、そのこと自体が、本作の批判をうけとめていないのではないか、と思うからだ。