三崎鳴 さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.5
作画 : 2.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
原作者が同じ「極黒のブリュンヒルデ」が4月から放送されます
岡本倫作漫画『エルフェンリート』を原作としたアニメーション作品。殺戮と暴力に彩られた愛と差別の物語。海外での評価が非常に高い本作は猟奇的な描写が多く、萌え寄りなキャラデザインとのギャップが印象的である。内容は対人類殺傷能力であるベクターを持った女性型ミュータント<ディクロニウス>と大学生の主人公との共存生活とそれにまつわる様々な騒動や事件を描いたもの。プロットと設定については中々関心でき、展開も常に緊張感を保っていて飽きさせないつくりは巧妙。ただ一番の盛り上がりどころは中盤、差別をテーマにしたいじめ問題や動物虐待を取り扱っている部分と、主人公とディクロニウスとの邂逅を描く過去エピソード部分であり、山場を越せば終盤は盛り上がりに欠ける閉め方だったように思える。原作未完時に映像化したため中途半端に締め括るのはよしとしても、最後まで引っ張った展開に一時的であれある程度の決着はつけてほしかったというのはおこがましいだろうか。テーマの一部でもある多文化との共生や殺人の正当化についても中途半端なままである。「一人の人間の中でこれらのことは複雑に絡みあっている。平凡であることへの劣等感。他人との違いによる劣等感。同じ境遇の者への親近感。そして、救い。この作品は表面的にはお色気、ラブコメ、バイオレンスだが、本質は差別と救いであろう。 社会問題にもなっている苛め、つまり差別はこの作品の中に詰まっている。誰しも救いは求めている。」と監督は語っているが、果たして本作のキャラクターは救われ(もしくは報われ)たのかどうか甚だ疑問である。SF設定やアクションよりも内包している大きなテーマ性の方はお座なりな扱いを受けているのにも関わらず高評価なのには同意しかねるというのが個人の見解である。テーマ曲は良いがキャラデザインが特徴的で(萌え崩れとも言えるか)受け入れにくい部分もあり、ここで損をしている作品でもある。評価を二分する問題作であり、名作と声高に主張する者あれば露骨な拒絶反応を示す者もいる。鑑賞を終えてどうもしっくり来ないなら続きは原作で、ということだろう。