らしたー さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
姿が見えない第三者が撮影した風景
当然のごとく原作は未読。
何話だったか、るんとトオルがファミレスに入っ際に、互いにソファ側の席を譲り合った挙句、仲良く並んでソファに座る、というくだりがありまして、それが妙に印象に残ってるというか、この作品の真髄なんだろうなと感じた。
当人たちにとっては思い出してちょっとフフッとなれるハッピーな出来事。他人から見れば、一瞬だけフフッとなってすぐにどうでもよくなっちゃうような出来事。
私自身、いまだに「日常系」っていう括り方をよく理解できていないところがありまして、日々の変哲もないちょっとしたイベントに一喜一憂してる様を描けばそれが日常系であるならば、イカ娘なんかはド直球の日常系のはずなのに、そこはなぜか意見が割れたりするからよくわからん。
舞台設定に非日常的なものが混じった瞬間、たとえどれほど「彼らにとっての平和な日々」を描いていても日常系とは認識されないものなのでしょうか。逆に学校生活が舞台であれば、そんなやついねーよ!キャラのオンパレードでもあっさり日常系認定されたりする。もうわけがわからんのですよ。
自分としては、誰かが死んだり人間関係に大きな亀裂が入ったりと、起伏に富んだ展開でお話のリピート性を壊してない限り、良くも悪くもぜんぶ日常系というくらいの感覚ですが。
てのはさておき、ひとつたしかなことは、もしこの『Aチャンネル』が日常系でないとしたら、この世に日常系なんてものは存在しないということ。それくらいどこへ出しても恥ずかしくないくらい純度の高い日常系であろうこと。
ここまで日常純度が高くなると、ちょっと独特な印象を受ける。
なんていうか、実は姿が見えない第三者がいて、そいつがビデオカメラ回して4人の主人公たちの風景を撮影しているんじゃないかっていう。それを編集して、挿入歌挟んで、見れる体裁にして放送してる、という感じ。
どんなアニメであれ普通、「必要だからそのシーンを描いてる」わけですよ。見せ場とは呼べないシーンも、見せ場を際立たせるために必要だから、描いてる。
『Aチャンネル』はどうかっていうと、どこかの誰かがビデオカメラで撮影したナギたちの平凡な生活風景の中から、なんとか使えそうなシーンを選び出して、ギリギリ不特定多数の人様に見せられる状態に仕上げた、という感じ。瞬間瞬間に対するアテンションがどこまでも希薄で、ややもすると何らの感想も持てないまま観終わってしまうほど。
不思議なことに、ここまで日常純度が高くなると、逆に観れちゃったりもする。
けっこう満足した。