退会済のユーザー さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
神話が誘う十二国記の世界
【個人的殿堂入り作品】
《神話》
大昔、天帝は九州四夷併せて十三州を滅ぼし、5人の神と12人の人を残して全てを卵に返した。
中央に五山を作り、西王母を主に据え、五山を取り巻く一州を黄海と変じ、
五人の神を竜王として、五海の王に封じた。
そして、12人の人にそれぞれ木の枝を手渡した。
枝には3つの実がなり、一匹の蛇が巻き付いていた。
蛇はほどけて空を持ち上げ、実も落ちると、それぞれ土地と国と玉座を作った。
そして、枝は変じて筆となった。
蛇は太綱を、土地は戸籍を、国は律を、玉座は仁道を、筆は歴史を意味する。
〔筆〕
創造主(作者)の筆によって歴史は作られる。
ここに河が流れているからこの国はそこから他国に攻められる。
この世界の歴史でこんなことがあったからこういった伝説が残された。
こうした地道な創造(作者の個人的趣味)の積み重ねによってこの世界は作られた。
それにどれくらいの時間が費やされたかは最早創造主にも計り知ることは出来ない。
しかしそしてそうして出来上がった世界(観)は実に揺るぎのない堅固なものだった。
そして物語は幕を開ける。
〔土地〕
戸籍のある土地を離れた人間の身分を証明する小さな木片のことを旌券(りょけん)という。
そしてその旌券を持たずに旅する者のことを浮民という。
蝕によって蓬莱から流されてきた海客は概ね浮民と同じ扱いを受けることになる。
海客としてこの世界にやってくることは、その人にとって運命的なことなのだろうか?
もしそうだとすれば、その『運命的なこと』を受け入れてしまえば後は全て上手くいくに違いない。
少なくとも杉本はそう思っていた。
しかし『見えない力』が働いたのはその発端だけである。
実際、陽子が王になることを受け入れる為には、
この世界の現実と向き合い悩み続けなければならなかった。
『月の影 影の海』
それは王に選ばれた者の苦悩と成長を描いた物語。
〔王座〕
麒麟とは慈悲深き生き物である。
仁道を重んじるこの世界の象徴のような存在だ。
そして彼らには重要な役割が与えられていた。
天啓を受け、王を選ぶことである。
では『天啓』とは一体何なのか?
残念ながらここでは徹底的にボカされている。
まるで触れてはいけないもののように。
それでも王は選ばれる。
それが『運命』であるかのように。
『風の海 迷宮の岸』
それは王を選ぶ者とそれを取り巻く不思議な世界の物語。
〔国〕
(祥瓊)
律とは刑法のことである。
この世界の国の法律は役人が作り、王がそれにお墨付きを与えることで成立する。
役人には実際に国を切り盛りしているのは自分たちだという自負がある。
だから王が道を誤ればこれを誅することも辞さない。
そして祥瓊は王宮を追われた。
私は何も悪くないのにと思いながら・・・。
(陽子)
役人たちは麒麟が連れてくる王に過度の期待はしていない。
何故なら『麒麟が選んだ王が必ず名君になるとは限らない』と知っているからだ。
今度の王は『また』女性だ。
しかもこの国のことを殆ど知らない海客だ。
下げた頭の下で溜息をつく。
こうなったら王に見切りをつけ玉座に押し込め、自分たちの意のままに国を動かす他ない。
それがたとえ民の為ではなく、自分たちの為であったとしても。
こうして居場所を失った陽子は王宮を後にする。
どうすればいいのか分からないと・・・。
(鈴)
海客はこの世界の言葉が分からない。
それ故に常に疎外感と孤独に付きまとわれる。
だから鈴は探していた。
私に救いの手を差し伸べてくれる人を・・・。
何も知らないということは恐ろしい。
多くのことを知って初めて正しい判断が出来るようになるからだ。
しかし何も知らなかったこと、
見て見ぬ振りをしてきたことを認めるのはもっと恐ろしく、勇気のいることだ。
『風の万里 黎明の空』
それは自分の愚かさを認め、勇気をもって一歩踏み出した者たちの物語。
〔蛇〕
太綱とは天帝が定めたとされる王を含めた十二国世界全体が守らなければならない法のことである。
すなわち『天の意思』である。
では本当に『天意』は存在するのだろうか?
『天帝』はいるのだろうか?
それはこの世界の『システム』の根本に関する疑問でもある。
特別な存在である麒麟の選ぶ王は果たして本当に『正しい王』なのか?
『東の海神 西の滄海』
それは『天意』の真偽に疑問を呈しつつ、王の資格を問う物語。
《神話》
この世界には『天意』の存在に疑問を持っている人が少なからずいることが分かる。
陽子も安易にその言葉で物事を片付けることを避けているようだ。
だが今ここにいるのは『天意』ではなく『自分の意思』だと言い切った。
「あいつは国そのものを変えてしまう気かもしれんな」と延王は言う。
陽子には国、そして世界をも変えてしまう力があるのかもしれないと考えるのは穿った見方だろうか?
しかしもしそうだとすれば・・・この世界で次に『神話』になるのは陽子だろう。
【追記】{netabare}
正直アニメ作品としての出来栄えは太鼓判を押せる程ではない。
作画は良いとは言えないし、演出面も普通である。
だからこの手の話に興味のない人は最初から観ない方がいいかもしれない。
逆に私のようにこうした話が大好きな人はもっと観たいと思うだろう。
原作が完結したら(いつのことになるか分からないがw)、
この続きを作るのではなく、リメイクして欲しいと切に願う!
【各話評価:平均6.26点】
1→45
☆☆◎☆◎☆☆☆神◎☆☆☆◎◎☆☆☆☆◎◎☆☆☆☆☆☆◎☆☆☆☆☆神神☆神神☆☆☆☆☆☆☆
【神回】
第9話「月の影 影の海 九章」
陽子の正体が分かる回。結構凄い設定だと思うのだが、話に全く無理がないことにひたすら感心。
第34話「風の万里 黎明の空 十一章」
3人の距離が近づき物語は大きく展開し出す。ワクワクが止まらない^^
第35話「風の万里 黎明の空 十二章」
ついに鈴と祥瓊が出会う。そして物語は加速する。続ワクワクが止まらない^^
第37話「風の万里 黎明の空 十四章」
王道ではあるが、航空騎兵登場からの展開に鳥肌が^^
第38話「風の万里 黎明の空 十五章」
作画がかなり微妙な回ではあるが、終盤の祥瓊と鈴が良かった。{/netabare}