sekimayori さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
もどかしい世界の上で
引きこもり(というよりニート)の青年・佐藤と謎の少女・岬の、愛と勇気のひきこもり脱出物語。
原作のキャッチコピーが「青春を後ろ向きに駆け抜けろ!!」ということで、ジャンルとしては青春群像劇風社会風刺コメディ、でしょうか。
ただし単なる喜劇として見られるかどうかは視聴者の社会経験・社会的地位に大きく左右されそうで、つまりは観る人を選ぶ作品。
まっとうに順風満帆な人生を歩んできた人から見れば、この作品は、ヒモニートとヤンデレ美少女が、エロゲオタクの専門学校生や薬中メンヘラ女たちと、自業自得でグダグダな日常をなんとか過ごしていくシュールコメディに映るでしょう。
要は、クズ人間たちが社会の泥沼に足を取られのたうっている様を、社会問題と絡めて乾いた笑いで笑い飛ばす以外に楽しみ方がない。
実際、登場人物はほぼ例外なく性格に難ありで問題を抱えていますし、作中で起こる事件はそのどれもが「よりによってその選択肢を選ぶかおい……」という最悪なチョイスの産物に他ならないので。
しかも、そうやって視聴するには笑いが弱いしテンポも遅く、24話は冗長に過ぎるという難点まである。
一方で、人生で足踏みをしていたり日常生活で鬱屈した思いを抱えていて、なおかつドMの素質を備えた人には、他では得難い感慨を与えてくれるアニメになりえます。{netabare}
少しの不運と少しの自己責任で、にっちもさっちもいかなくなった登場人物に共感したり。
キャラの言動を笑いながらも、頭の片隅で共感を覚えていることに気づいてゾッとしたり。
エロゲ製作とか花火大会とか夜の公園でのカウンセリングとか、「なんだこいつら自分よりずっと青春してんじゃねーか」みたいな虚しい嫉妬を覚えたり。
後輩の山崎との友情に憧れつつ、終盤の彼の決意やけじめのつけ方にどうしようもない悲哀とそれでも振り絞ったなけなしの男らしさを感じてグッと来たり。
目の前に突如現れた美少女で、超献身的だけどその実かなりメンヘラ気質で、だけどやっぱり主人公を大切に思ってくれる天使な岬ちゃんに萌えまくったり。
各話が終わった後、エンディングを聴きながらなぜかちょっと放心状態になりつつ自分の現状を直視したり反省したりでもやっぱり自己弁護したり。{/netabare}
学生ニート状態の自分には刺さる部分が多く、苦悶のうめきを漏らしつつ微妙に恍惚としつつ、けっこう楽しんで視聴しました。
ただ、「賢者モード」になって冷静に考えると、やはり手放しで称賛したりおすすめできる作品ではないです。
不満として{netabare}
・主人公の佐藤があまりにもヒモ体質で弁護のしようがない
・先輩もかなりどうしようもない
・周囲(特に親)の主人公への態度が甘すぎる
・種々の社会問題を扱ってはいるが描写がぬるい
・要するに、題材の割にリアルじゃないし、かといってフィクションとしてのはっちゃけ感もない
・展開が遅く中盤の自殺オフ・ネトゲ・マルチの3パートは観るのがだるい
・作画が崩れる
・主人公たちの将来の不安がぬぐえない、成長がみられない
・岬ちゃんがまだ自分を訪ねて来てくれない
{/netabare}みたいな点が思いつきます。
結論として、キャラ達を自分に重ね合わせて観ることができる人には思い入れのある作品になるのではないかと。
OP・EDが素晴らしく、岬ちゃんが可愛いので、長さと展開の遅さの割には視聴意欲がわきます。
EDのタイトルにもあるように、「もどかしい世界の上で」あがく登場人物を見守るうちに、ほんの少しの愛おしさとか現状から抜け出そうとする勇気とか、あるいは荒唐無稽な陰謀論が兆すかもしれません。
ああここでこんな長文感想書いてる場合じゃないな勉強しなきゃでもだるいなこのだるさはきっとNHKの精神攻撃によるものだそうだそうに違いないうわああああ助けt
【個人的指標】
ストーリー 35/50
キャラクター 12/15
音楽 12/15
作画 6/10
声優 8/10
合計 73/100