「惡の華(TVアニメ動画)」

総合得点
65.0
感想・評価
1146
棚に入れた
4510
ランキング
3539
★★★★☆ 3.2 (1146)
物語
3.4
作画
3.0
声優
3.3
音楽
3.4
キャラ
3.2

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退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 2.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ハナガサイタヨ…ヒドクカゼニオビエ タ ダレ モ ミ タ コトナイ ハナガ(EDの歌詞)

ボードレールの詩集「惡の華」の表紙に描かれている絵が
何とも気持ち悪くて印象的だった。
この絵は、オディロン・ルドンというフランスの印象派の画家が
描いたものらしい。
花の中心に目が蠢き、作中でやたら象徴的に使われています。

まず、このアニメ。ハッキリ言ってこのアニメはアニメではありません。
ロトスコープという制作技法がとられているらしく、実写撮影をした上で、
その映像をセル画にトレースして絵に起こし直しているので、ほぼ実写に近いです。
アニメ絵特有の可愛さの誇張が無く、キャラは人間そのもの。

じゃあアニメにせず実際のドラマとして作れば良かったのでは?と思いがちですが、
それだとルドンの絵が醸し出す怪しい雰囲気と実写の調和が望めない。
人の負の感情に共鳴して揺れるあのゲジゲジ、人を悪の道に呼び込むように見つめる不気味な瞳。
物悲しくも、人が闇へ引き込まれていく心情が、このロトスコープと上手く混ざり合って、
独特な空気をうまく映像化出来ていたのではないでしょうか。

シナリオは簡潔に見ると「好きな娘の体操着を家に持ち帰ってしまった事によって
変態に覚醒していく主人公春日君の行く末」なのだけど、
そこに至るまでのプロセスから常に目が離せなかった。
春日君と仲村さん、二人が起こす奇想天外な行動も、
単純に「面白いから」という理由に起因しているのではなく、
人間誰しもが持つ破壊衝動をひた隠しつつ、平和な日常に身を置く事に対する疑問を終始
考えさせるような話の流れだったように思う。

狂者になって殻を抜け出したその先にあるのも結局は現実で、堅牢な檻で構成された平和が
人をおかしくする事は実際問題、往々にして存在します。
「―あの山の向こうまで行きたい」
この言葉を口にした仲村さんはその先にどんな理想郷を見ていたのでしょう。
ありきたりな現実にもがき苦しむ少年少女の心の闇が痛々しいほどストレートに伝わってきました。

しかし、実際このアニメを他人に勧められるかって言ったらとても勧められないんですよね…。
春日君の演技の下手さ、無音時間の比率の高さから、見る人によってはそれこそ
ツマンナイの一言で一蹴されそうなので。

ですが私は、不気味なアニメの代名詞としてインパクトを擦り付けるには十分すぎるほどの
作品だったと思います。

余談ですが、仲村さんの声優役の伊瀬茉莉也さんは当時、仕事に対する悩みが多く、
声優業を辞めようと考えていたらしい。それがこの作品が切っ掛けで考えをまた
改めたとの事。そのぐらい強烈なパワーが「惡の華」にはあったのでしょう。

他の方のレビューを見てから私もレビューを書きたくなったぐらい挑戦的なアニメでした。
人気が無いのは当たり前と思う反面、残念でもあります。

投稿 : 2014/03/06
閲覧 : 400

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