九条 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
本格サスペンスとしての首尾一貫性。
神業的な執刀技術を誇る天才脳外科医が、死の淵を彷徨う少年の命を救ったのが悲劇の始まりであり
少年に関する秘められた衝撃の全貌を、ミステリアスに浦沢直樹が紐解く、全74話の長編サスペンス。
病院における派閥抗争や、恣意的な患者選別など、権力闘争や医療倫理の内容は微々たるものであり
極右組織によるヒトラーの後継者計画や、政治的イデオロギーの側面も、具体的に掘り下げていない。
つまり、ストーリーを派生させる選択肢はあるものの、本格サスペンスとしての首尾一貫性を有しており
他分野から浮上するイメージに倒錯する流動的な作品ではなく、極めて固定的な作品であると言える。
長丁場を完走する上においては、多少の寄り道も必要ではあるが、それを要しないほどの枢軸がある。
ベルリンの壁崩壊後のエキゾチックな雰囲気や、ナチズムを反映している、独特の世界観も不動であり
謎が解明される過程は無論のこと、結末についても、壮大なスケールを締め括るに値する創見である。