aaa6841 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
常軌を逸した主人公のキャラクター
長ったらしいタイトルに加え、秀才毒舌美少女、頭の弱い巨乳美少女、ブラコン気味の妹、厨二病男、男の娘等々といった登場人物による学園モノで、変わった部活を始め、会話の端々にはパロディネタにも事欠かない等、一見、昨今盛んな量産型テンプレアニメのようだが、このアニメが異質である点は主人公のキャラクターにある。
主人公の性格が、もうとにかく卑屈。
リア充グループに声をかけられると、反射的に負けを認めて会釈や愛想笑いをしてしまったり、ぼっち生活で培った強烈な自虐ネタをかまして相手にドン引きされたり、初対面の女子に対するコミュニケーションの一歩目が「威嚇」だったりするくらいに卑屈なのである。
そして、弱い。
主人公らしく、「女の子がイジメられているところに、颯爽と現れて助ける」なんてことは、まず出来ないのである。
一時的に、助けようと決断したとしても、3秒もあれば先ほどの決断を翻し、諦めるという結論に至る。
このように、このアニメの主人公には、「主人公補正」が不足している。
主人公補正といえば、何の理由もなく女の子に好かれたり、無駄に殴り合いが強かったり、わけのわからん講釈や説教を垂れたとしても、何故か皆がそれに賛同したりすることだと思うのだが、この主人公にはそれが見当たらず、普通に大衆から嫌われたりする。
ただし、そのような卑屈な性格ではあるが、一定の「信念」や「プライド」は持ち合わせているようで、そこから逸脱しない限りは、感情を押し殺し、自己犠牲も厭わない。
本人は、卑屈であることを自覚しているのだが、「良い仲間に出会ったのだから、俺もこいつらのようになろう」とか、「いい機会だから、まともな人間に生まれ変わろう」などとは微塵も考えておらず、むしろそんな自分が好きで、その卑屈さの源である己の信念を貫こうとする。
そうして、自分が変わるのではなく、周りを変えていく。
物語は、主人公のあまりの偏屈さに辟易していた教師が、主人公に対して、ある部活での活動を命じるところから始まる。
その内容は、学生等から問題解決の依頼を受けるというものだが、ボランティアと称して様々な問題に首を突っ込み、主人公のどぎつい卑屈さと偏屈さで、他人の人間関係や精神を滅茶苦茶にしていく。
その問題への対処方法ゆえに、対処すればするほど周囲の人間に蔑まれたり、依頼人に無視されたり、挙句の果てには助けた相手から嫌われたりする。
その様を見ているのが、実に面白い。
卑屈でありながらも、そこには妙な爽快感が残る。
このアニメは、ラブコメというよりは、もう少し範囲が広めの「人間関係」に主題が置かれているようだが、一応ラブコメっぽい場面もある。
そういった場面で、主人公は、テンプレ的な「難聴・鈍感主人公」のような行動をとるのではなく、むしろ敏感で、ちょっとしたことで女子に好かれているのではないかと思ってしまうのだが、過去の失敗、トラウマ等の影響で、「自分に優しくしてくれる人間は、皆平等に優しくしている」と自分に言い聞かせ、相手には勘違いによる迷惑をかけず、自らも傷つかないことを重視してしまうという、童貞をこじらせたような行動をとる。
そして、何事もなかったかのように、努めて平静で、安穏で、普通であろうとする。
その原因となった過去の失敗は、悲しくも切ない「学生あるある」ネタとして、所々で回想により提供される。
それは、今となっては感慨深いような、むしろ今からでも記憶を抹消したいような、思い出すたびにストレスの影響で血液がドロドロになっていくのを感じるような、そんな痛々しいものである。
人によっては、この回想で古傷が開くかもしれない。
ちなみに、主人公のキャラクターデザインが、イケメンである原作絵から微妙なルックスに格下げされており、捻くれた性根が顔面に滲み出たような、イメージ通りの出来に仕上がっている。
これは、そんな愉快な主人公を、愛でるアニメである。