ジャーファル♪ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
【ネタバレ有】「運命や意味を探し葛藤する、“メッセージ性の強い”作品!」
登場人物たちの深い“心理描写”を、“独特の世界観”で描いた良作―。
主人公たちの“精神的な葛藤”をテーマとしているため、悲しく重い内容となっているが―、“世界観を上手く描いた背景”や、それに合った“落ち着いた色彩”、“音楽”など作品全体を通して“統一感”がありその“バランス”が素晴らしい―。
ただし、この作品は、かなり“観る人を選ぶ”作品だと思う…。
その理由は、全体を通しての“浮き沈み”というか、盛り上がったり下がったりというストーリー“ではない”ということ…、常に話の調子としては、暗く落ち着いていて切ない…そんな調子で物語は進んでいく…。
画の感じや、OP・EDもそうで、迫力あるシーンや急な物語の展開などに面白さを感じる人には、単調で、面白さを理解することが出来ない人もいるだろう―。
しかし、上でも書いたように、この作品は間違いなく“名作”である―。
確かにこの作品は、“暗く憂鬱な印象”で、迫力あるシーンもない。
だが、観終わった後のこの作品には、それとは全く角度の違う、心温まる優しい、“満たされるような充実感”を感じる―。
この手の、視聴者に何かを“訴えようとする”作品は、観終わった後に何か“メッセージ性のようなもの”を感じる…。
この作品では、孤独を感じる主人公・“ラッカ”が、優しく温かい仲間に囲まれて、とても幸せな時間を送りながらも―、ある出来事をきっかけに、「自分の生まれてきた意味」や「自分がすべきことは何なのか」について悩み、それを見つけていく―。
そんな“心の葛藤”と、それに打ち勝つまでの“心の成長”を描いており―、そこに何か、“現実にも通じる”メッセージ的なものを感じるのだろう―。
この作品は、“1クール13話”と短いながらも…、
ラッカが“灰羽(はいばね)”(=羽が生え、光輪を頭に乗せた人たち)として生まれてきてから、“レキ”や“クウ”といった仲間に助けられながら、試練に打ち勝つまでの“前半の物語”と―、
成長したラッカが、今度は、今まで助けてくれていたレキを救うために葛藤する“後半の物語”に分かれており、話を広げすぎないため、非常に観やすい展開となっている―。
それでいて、1話1話はすごく“意味深”で、“感動するシーン”が数多くある。
例えば、クウが“巣立つ”(=この世界から消える)話などがそうで―、
―それまでは、落ち着いた、温まる内容の話が多かったのに、謎の多い“灰羽”という存在の、“意義”や“運命”のようなものが強調されており、何かを“悟った”かのように消えていったクウの姿に、ラッカ達はもちろん、観ているこっちまで、悲しく切ない気持ちにさせられる…。
また、この作品の主人公はラッカであるが、“本当の”(という言い方はラッカに申し訳ないが…)主人公であるレキの運命が悲惨で、哀れに思った人も多いだろう…。
前述したとおり、この作品の後半はレキの話であり、呪われたと言ってもいい、レキの運命がとても残酷で―、結果として言えば、最終的にラッカによって救われ、巣立つことが出来たレキの姿は、切なくもどこか晴々していて、良い意味での“感動”があった…。
この作品は、設定を深くは語らず、“あいまいな”部分が数多く残される。
(なので、ここらはあくまで想像だが)、レキは本来、救われることなく、人とも灰羽とも交わることのない孤独の中を、年老いて朽ちるまで過ごすことになるはずだったのだが、その残酷な運命を、ラッカによって救われた―。
しかし、その残酷な運命を生きている張本人こそ、連盟の“話師(わし)”なのではないだろうか…。
実はこれは、さっきは想像だといったが、そうではないかと思わせる描写がところどころにある―。
例えば、話師がレキの運命をラッカに語る場面などがそうで―、顔や羽を順に移していったシーンは、まさにその運命を背負ったのが話師だと言っているかのような“演出”で、結論は一人一人の想像に任せてはいるが、おそらくはそういうことなのだろう―。
なので、もしそうだとするならば、本当に“哀れ”なのは話師であり、最後の最後で救われたレキとは違い、その運命に、いたたまれない気持ちにさせられる…。
その話師の存在などのように、この作品は、その謎や複線の多くが解明されず、淡々と物語が進行していく演出がなされている―。
なので、正直、この作品内の“設定”をもっと深く知りたいと思ったりもする。
―「灰羽とは何なのか?」
―「グリの町や外の世界とはどういう設定なのか?」
―「この世界とは、死後の世界や無意識の世界を表しているのか?」
―「巣立った後の灰羽はどうなるのか?」
―「トーガとは何者なのか?」
…など、挙げればきりがないが、観終わった後の感想としては―、
―確かに疑問は残りはするが、レキが救われ、いつかは巣立ちの時が来るであろう、ラッカや他の灰羽達が、今度はレキの代わりに子供たちの世話をし、次の灰羽の手助けをする…そんな様子が最終話で描かれており、どこか“温まる気持ち”で観終わることが出来る―。
なので、この作品は、あまり深く語りすぎず、このくらいの長さで終わるのがちょうど良かったようにも感じる―。
“ストーリー”はもちろん、“画のタッチ”や“色彩”など、確かにこの作品からは、“暗く憂鬱なイメージ”を感じる―。
しかしこの作品は、自分の“運命”や“意味”に悩みながらも、ときには仲間に助けられながら、進むべき道を見つけていく…、そんな主人公たちの姿に、現実の自分たちにも通じる“何か”を感じ、共感させられるのだろう―。
落ち着いた雰囲気ながらも、何かを訴えかけてくる、そんな“メッセージ性の強い”良作であった―。
(終)