「ガールズ&パンツァー(TVアニメ動画)」

総合得点
88.3
感想・評価
3202
棚に入れた
14079
ランキング
118
★★★★☆ 4.0 (3202)
物語
4.0
作画
4.1
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

sekimayori さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

「超電磁砲メソッド」と「マジレスかっこわるい」 【73点】

女子が戦車で試合をする戦車道が普及した世界での、戦車萌えガールズゆるスポ根アニメ。
個人的には「傑作だぜ!」とまではノれないけど、ライトなエンタメとして素直に楽しい作品。


■「超電磁砲メソッド」は優秀
超電磁砲メソッドってのは、個人的に「女の子+少年漫画+α」をそう呼んでるだけなんだけど。
戦闘美少女の元祖はセラムンらしいのですが、恋愛とか排した少年漫画展開なアニメ作品だと『とある科学の超電磁砲』が真っ先に思い浮かんだので、名前を借りてます。
もっと以前にこれがあったよ、て方はご教授くださいませ(『大正野球娘』とかそうなのか?)
とまれ、この勝手な定規の上に引き直してみれば、本作は「女の子+少年漫画+戦車」になるわけです。

で、他作品との比較をご容赦頂くとすると。
 女の子≧少年漫画≧超能力 なのが『超電磁砲』
 戦車>>>少年漫画>女の子 なのが『ガールズアンドパンツァー』
て具合かな。
超電磁砲はキャラ描写多めながらも、全要素のバランスがとてもいい。
一方ガルパンは、時として煩わしさも伴うキャラ描写は、記号の提示と外面から観察可能な関係性の描写程度にさらっと抑えて。
あとは、戦術的合理性とご都合主義のバランスを少年漫画的に調節した下剋上物語によって、ひたすら戦車戦の音・動きの快感を見せつける。
音響だけじゃなく楽曲も良いですしね、ベースになった軍歌とか行進曲ってよくできてんだなと思わず笑っちゃうレベルのノリの良さ。

とはいえ、本作は萌えミリとしては屈指のバランスの良さを誇る、気がします。
①ミリタリな方々をしっかり釣り上げ、一般人も驚かせる戦車描写のクオリティ
②テンポが良く小ぢんまりした、万人受けするスポ根少年漫画的王道展開
③記号性は濃いけれどクセの強すぎない女の子たちがよりどりみどり
ということで「女の子+少年漫画+α」がちゃんと成立してる。
だから、劇場版で既存ファンの評判の良さが新規層に還流しヒットした構図にも、なるほどなぁという感じ。
正直、②③は逆に見ると「話もキャラ描写も薄い」と言えます。
が、作品の根本として、見せたい「キャラ」は戦車、「ストーリー」は戦車戦なわけで、そこは目一杯、残りの二要素もほどほどに楽しめるバランス感覚が凄いところなんでしょう。

そんな私見に反して、特定キャラの熱狂的ファン層はちゃんと成立してるようで。
媚びすぎないキャラデが良かったのか、描写の少なさが逆に二次創作的な妄想の幅を広げたのが奏功したのか。
ちなみに私が推すなら、作品設定の荒唐無稽さに通じる鷹揚さとふとした時の繊細さを持ち合わせる、角谷杏(生徒会長)ですかね。
人徳も含めたリーダーシップを感じる。

もちろん、こんな単純な方程式に則って作ればヒットさせられる、なんて傲慢は申しませんが。
クソオタクとしては、上手に(ってのが難しいんだろうけど)「超電磁砲メソッド」が実現されるとホイホイひっかかっちゃうよね、ってお話しでした。


■「マジレスかっこわるい」を作り出せるということ
上でちょろっと、物語とキャラ描写というガルパンの欠点について言及しました(あと設定の荒唐無稽さ、な)。
最近大人気の本作ですけど、ファン含めある程度の人数が、そこには同意できると思います。
ガルパンは完全無欠の傑作じゃない。

一方で、ファン層の「そこは言っちゃ野暮でしょ」みたいな空気も、理解できちゃうんですよね。
なにせ、戦車戦の描写を筆頭に、キャラのセリフのくすぐりといった細部から物語の緩急に至るまで、基本的にとても高い水準で作られてるように見える。
だから、あまりにも大きな穴は意図的に放置されてるんだろう、と想像できてしまうのです。
で、きっと多くの方と同じく、その想像は正しいという確信が持てる。
私、作品外在的で同調圧力的な「マジレスかっこわるいwww」って風潮は好きじゃないんですけど。
ただ本作に関しては、作品内在的=意図的に、突出した長所によってそれを実現した確実に楽しい作品をお出しされてるので、脱帽して堪能させていただくほかない。
製作陣が試合巧者すぎるわw


■完全に蛇足、萌えミリについて
{netabare}パヤオが『風立ちぬ』で大好きな零戦を描くのに堀越二郎の精神的葛藤を(ある種言い訳的に)必要としたのと対照的に、萌えミリにはそんな屈託が見られないんですよね。
兵器を歴史的(かつ、それゆえに否応なく思想的)な文脈から完全に切り取ってしまう感覚。
現実の人死にを、勇ましさと悲劇性の物語として遠景から消費する態度。
「どこまで現実との切断を図るか」は、戦争や戦いを物語とする場合に必ず付随する視点ですけど、萌えミリはかなり潔いところまで行ってんなぁと思います。
敷衍すればミリタリのみならず宗教や政治に対する態度・温度の問題と同根ですし(武器だけが争いを生むわけじゃない)、陰謀論者じゃないので、萌えミリはプロパガンダだ!とか喚く気はさらさら無いですけど。
ただ個人的に、アメリカンジャスティス!な映画を観た時に自然に浮かぶ冷笑を抱かないでいい程度のセンシティビティは、備えていってくれると嬉しいです。
日本の戦後思想史の展開や世代論・時代性の話ではなく、普遍的な人の営みとしての歴史・思想と、その上に我々が生きているという接続性への意識・敬意の問題として。
オタク文化のコンテクストに生きる一人の萌え豚としては(これも「文化史へ接続してる」のですね)、萌えミリも単なる娯楽だと思うので、余計に。
荒唐無稽な設定でミリタリをファンタジーとして受容する姿勢を強硬に打ち出した点で、ガルパンは商品性も批評性も優れていると思いますよ。
だからけっこう好きなのかも。
センシティビティを要するか自体が意識の対象になったり、かわいい女の子があらゆる分野を侵食して目を楽しませてくれたり、私は幸せな時代を生きてます。{/netabare}


【個人的指標】 73点

投稿 : 2016/06/09
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サンキュー:

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