Progress さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
今見ると懐かしい
なんというか、主人公の佐藤君の部屋や近くにある公園は、自分にはなじみのない場所だけど、どこか安心できる居場所のようなイメージを抱いていました。
個人的に、佐藤君と夏の公園の組み合わせが好きですね。
昼いても夜いても落ち着ける場所。そんな雰囲気が好きです。
再評価
こんなこと書いてたんだなあ。
懐かしくなって、再考してみることにしました。
私がこの作品を好きになったのは、
当時憧れていた、「オタク文化」に触れるためでした。
FLASH動画の時代が終わりを迎え、
ネットゲームが全盛期。もしかしたらニコニコも全盛期だったかも。その時、ネットをやらないと決めていたから、よく知らなかったんです。
そんな環境化で出会った漫画がこれ。
NHKにようこそ!
あの時代に、私はまだ見ぬオタク文化の情報ソースとして、この作品を愛読していたものでした。
出会ってから数年後、私はアニメを見るようになりました。
そんな私に懐かしいタイトルが。
それがこの作品。
私は多分、アニメーションと漫画で別の魅力を感じていました。
それが、私が最初にこの作品のレビューで書いた「雰囲気」
オタク文化や、やばいキノコ、やばいカルト、やばいネズミ講。
そう言った刺激的な話題を拾うことよりも、
どこかこの作品の、夏の匂いだったりとか、
変えがきかないどうしょうもない同士の友達関係だったりとか。
そう言った曖昧なことの方が印象に残っている。曖昧なことの方の魅力を伝えたい。
この作品の夏の匂い。
窓から見える、蒸気を発したアスファルト
日照りの中、傘をさす少女
ガンガンに聞かせたクーラー
夜になって少し暑さがやわらいで、公園のベンチでぼんやりする男
そこには何か夏を焦がれるような感情が湧き上がってきます。
多分。雰囲気づくりがうまいよねって言葉に当てはめれば、そうだけど、それだけかな。
あの煩雑な夏の雰囲気の中で、煩雑な日常生活を描いたからこそ、静けさと涼しさが夏の夜に強調されたのかも。
どうしようもなく社会から追われているような感覚。
人から見られている、馬鹿にされている、監視されている、
自意識過剰とも取れる、佐藤くんの感情。
他人に見栄を貼る、嘘をつく、閉じこもる、疑う。
そこにある、恐怖や自尊心。
そういった感情が、多分佐藤くんの中で喧嘩してる。佐藤くんの人を信じるって感情と。
いつも負けると、岬ちゃんにもう騙されないぞと言わんばかりに引きこもり、近くの人を遠ざけ、遠くの優しくしてくれる人に引っかかる。
そして戻ってきて、心を入れ替えたりとか、また引きこもったりとか。
そういった忙しない日常に休息を与えてくれるのがあの夏の夜、山崎の部屋、夜の公園
戻ってきた場所に、山崎がいて、馬鹿な話ができて。
岬ちゃんがいて、不思議な講釈を聞かされて。
時間にしてみれば一瞬の中に、関係の尊さを感じれた。帰ってくる場所であり、懐かしさを向ける郷愁の場所。
日常の中で、忙しなく感情が揺れ動いて、人を疑ったりするけれども、どこか、ぼんやりと感情が停滞することができる時間、感情に偽りのない時間、あの夏の夜の休息を描いたこの作品が、
なんとなく好きなんでしょうね。
本当はこの作品、夏が終わり冬が来て、佐藤くん達の界隈が疲弊していくような流れなので
夏って感じはごく一部なのですが、
私の中に作品で強く残っているのは夏への憧れなんですよね。
冬になると先輩がいなくなり、山崎くんがいなくなり、岬ちゃんもいなくなり、
今までの当たり前のようにあったものの喪失感が、
印象深い季節を作ってました。