三崎鳴 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
J.C.STAFFの奇跡
竹宮ゆゆこ作ライトノベル「とらドラ!」を原作としたアニメーション作品。内容は清々しいほどに王道を突っ切った学園ラブコメディ。本作を評価する理由としてまず一つ、近年のアニメ業界ではシリアス要素の強いラブコメディの本数が減少しつつある事を挙げる。それは視聴者の層が拡大し続け、アニメ作品の本数も年々に増えていく中で視聴者に娯楽を与えない作品が見限られつつあるからだ。作品の内容よりもヒロインの“萌え要素”が重視されつつありラブコメディというジャンルでは俗に言う“ハーレムもの”が量産される中では本作の評価は相対的に自然と上がることとなる。本作の一連の流れの描き方はドラマのそれに近いものであり、男女の共依存関係を中心とすることで男女の視聴者共に共感を得られ広い受け口を持っているということも高評価の一因である。心理描写が荒削りながらも分かりやすく無理な三角関係を組み立ててそこに逃げることもない。“感情のすれ違い”よりも“感情のぶつかり合い”を前に押し出すことで多感な時期の男女を美化することなく描いたのが好印象。安易に暴力描写を以って感情の爆発を表現した点については賛否両論あるが、それが岡田麿里という脚本家の味でもある。女性キャラクターの描き方については流石は原作者が女性と言う事もあって繊細に描かれていて文句の付け所がない。“暴力系ヒロイン”をメインヒロインとしてもこれが男性作家だと描き方にも違いが生じる。アニメ業界における学園ラブコメディ作品では上位に位置する傑作である。