退会済のユーザー さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
サスペンスアニメの極致であり、今敏監督の最高傑作
今監督の初監督作品であり、この独特な表現手法は後の作品「千年女優」「妄想代理人」「パプリカ」などにも引き継がれていきますが、
この「パーフェクトブルー」が最も画期的かつ幻想的な作品だと思います。
また、キャラクターデザイン原案に江口寿史、演出に松尾衡が参加しているのも見逃せないポイントです。
女優である未麻を中心に、現実と空想の隔たりが解らなくなっていく不気味な感覚は他では味わえないと思います。
場面と場面の切り替えをノータイムで行う手法や同じ場面を何度もループさせる手法が多用されていて、未麻の困惑がそのままこちらにも再現されるように感じます。
キャストの中で特に、未麻役の岩男潤子さんと未麻のマネージャー・ルミ役の松本梨香さんの演技は素晴らしく、見ているこちらまで震え上がるほどでした。
この映画の公開は1998年。
この頃のTVアニメの作画水準はまだまだ高いものではありませんでしたが、映画は今見ても全く遜色ないものばかりです。
とてもリアルな作画なので、アニメというより実写を見ているような気分です。
一応R-15指定なのである程度の過激表現を許容できる方のみオススメしたいと思います。
個人的にこの作品は一生忘れられないくらい衝撃的で魅力的なアニメです。
この作品のテーマは色々挙げられると思いますが、自分は「常識や認識を過信しない」ということを強く感じました。
加えると、ED主題歌のseasonは名曲です。これ単体でも良さは感じられると思うので一度聴いてみてほしいです。
以降ネタバレで、自分が凄いと感じた部分を書きます。
{netabare}
・脚本家の渋谷をエレベーター内 で殺害。扉が開いたままチャムの歌が鳴り響く。
→ラジカセの音だけが聴こえ、扉が空いた瞬間死体が目に飛び込んでくるので怖かったです。
・カメラマンの村野の自宅に侵入し、ありとあらゆる急所をめった刺しし殺害。その際鬼のような形相をした未麻が映る。
→淡々と犯行を行う彼女に戦慄しつつ、フラッシュバックする撮影のシーンを見て彼女に同情もしました。
・未麻の熱狂的ストーカー・内田が未麻を殺そうと追い回す(緊張感溢れるBGM)。一瞬の隙を見計らって未麻は内田の側頭部を鈍器で殴る(途端にBGMがピタリと止む)。
→音が突然止まって、後から映像が追い付く。この一連のシーンの音の使い方が一番秀逸だと感じました。
・マネージャーのルミが未麻のチャム時代の衣装を纏い登場し、未麻を追いかけ回す。途中鏡に映るルミの醜い姿。正気に戻った後奇声を上げながら道路へ飛び出す。
→松本梨香さん凄い!と思ったシーンです。正気と狂気の移り気が絶妙で、最後の奇声はどこから出てるのか不思議です。
・病院へルミを見舞いに来た未麻。用事が済んで車に乗り込むとき「私は本物だよ」と発して終わり。
→最後の台詞は現実だった未麻と幻想だった未麻の声が混ざりあって混乱しました。
見終わって思うのは、この映画が一番凄いのは何気ない日常シーンですら幻想となりうるということです。
私たちが当然そうだと認識している常識は、実は全く曲解された幻想に近いものかもしれない。と思わせられます。{/netabare}