sekimayori さんの感想・評価

4.7
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

ジャパニメーションの最高傑作……あと女性キャラかわいい！

日本の原風景を舞台に、微細かつ超常的な存在である蟲と関わって「しまった」人々と、蟲師ギンコの出会いを描く、静かな伝奇物語。
決して血沸き肉躍る物語ではないけれど、各話が趣深く、巷で一束いくらで投げ売りされている「感動」とは異なる余韻を残してくれる至高の作品です。

大人っぽい雰囲気の作品だと思われがちですが、実はこのアニメ、案外気楽に楽しめます。
ゲストキャラの声優陣が意外と豪華だったり、ギンコと探幽の淡いラブロマンスがあったり、化野先生の不憫さに笑ったり。
何より、毎回出てくる女性キャラがかわいい！
・頑張り屋さんな和装美人好きなら「筆の海」(20話)
・勝気な黒髪美人や一途な純愛が好きなら「海境より」(8話)
・双子姉妹好きなら「虚繭取り」(17話)
・天然系女中娘が好きなら「天辺の糸」(19話)
・元気系熟女が好きなら「暁の蛇」(16話)
・健気な現地妻!?好きなら「春と嘯く」(15話)
・ロ〇コンの方なら「緑の座」(1話)や「瞼の光」(2話)は押さえとくべき！
……なんだか危なくなってきましたが、それだけキャラが立っているということで(汗)
男性陣ももちろん魅力的なので、女性もご安心ください。

真面目なことを書くと、日本的感覚をここまで昇華して圧倒的な水準で描いた作品は今後現れないのでは、と思えるほど素晴らしい作品。
八百万の神的なアニミズム、仏教由来の無常観、自然への畏れと親近感、村落共同体の生んだ民間伝承、温暖湿潤気候特有の四季の感覚などが混然一体となって、作品のバックボーンを形成しています。
私は日本文化に特別詳しいわけではないけれど、(語弊を恐れずに言うと)日本人しか描けない漫画でしょう。
その原作を深く理解して丁寧になぞりつつ、吸い込まれるような緑色を中心に日本の原風景を再現した美麗な背景と、抑制的ながら効果的な音楽を加えて(スタッフを過労で半殺しにしながら)仕上げられたこのアニメは、いわゆるジャパニメーションの一つの到達点と言っても過大評価には当たらないと思います。

各エピソードは感動譚から鬱展開、ホラーまでバラエティに富んでいます。
夏目友人帳と比較される方がいますが、同じ怪異ものでも、こちらはかなり昔話とか民話的傾向が強い傾向です。
蟲はただあるようにあるだけ、それにたまたま人間が関わってしまったがために起こる物語なので、簡単に良い悪いの結論をつけがたい結末や、かなり重いバッドエンドも普通に出てきます。
それでもどのエピソードも視聴後に深い余韻を感じられるのは、毎回何らかの問いやメッセージが、教条主義に走ることなく提示されているからでしょうか。
個人的には「露を吸う群」が一番心を震わされましたが、どのエピソードもそれぞれのお気に入りになりうる、珠玉の作品群です。

思い入れが強すぎていつまでも感想書けそうなのでここで止めますが、とにかく多くの人に観てもらいたい作品。
原作大好きな人はもちろん、原作がダメだった人や未読の人でも、坦懐な心で観てもらえれば、必ずや心に残る傑作だと信じています。
4月から2期も始まるので、この機会にぜひ！

【個人的指標】　95点