「CLANNAD AFTER STORY-クラナド アフターストーリー(TVアニメ動画)」

総合得点
92.4
感想・評価
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棚に入れた
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ランキング
21
ネタバレ

tosakensan さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

華胥の夢

色々な視点から考えさせられる事が多く噂に違わず素晴らしい作品でした。

keyのゲームが原作のアニメーションは今までも見た事が無く、ゲーム自体も未プレイです。昨今評価が高く評判のアニメである事は知っていたため、一期のCLANNADから続けて視聴しました。

一期は正直言って何とも言えない感想です。ストーリー自体は評価出来る部分も多分にあるのですが、原作とは違い各ヒロインのルートを2クールに振り分けながら一つの話に纏めている関係で感情移入がどうしてもしにくいと感じてしまいました。特にクール数が長くなる物語の場合は、少しずつ時間を掛けてキャラクターへの自分なりの思い入れを作れる事がクライマックスのカタルシスに繋がる一つの要素だと思うので、そうした意味では若干の物足りなさを感じました。

二期は一期よりも更に評判が高かったのですが、上記の理由により視聴をどうするか一度は考えました。ですが主人公とメインヒロイン一人とのストーリーが殆どを占めるという事で、一期最終話の続きが気になり結局は視聴を決断しました。

以下の項目はネタバレを含みますので、大丈夫な方だけご覧になって下さい。

1.恋愛ものにおける特異さ
{netabare}

このアニメがまず面白い点は、何と言っても主人公がヒロインと付き合い出す所から結婚し、子供を授かる所まで描いている点です。一期では高校を舞台にしていることから元々の設定自体は他の青春恋愛ものと大差無いのかなと感じていましたが、今作ではメインヒロインである渚と朋也の話が物語の中心となっていきます。

ヒロインと一緒になる過程を考えるに、私は朋也はとても弱い人間だと思います。身体が弱いものの芯の強い渚と対比的に描かれており、身体は丈夫でも朋也の弱さとは心の弱さではないでしょうか。渚が居なければ乗り越える事が出来なかった場面がフラッシュバックするシーンなどは物語中に何度もありますが、この物語は『思い出の積み重ねがキチンと人の中に何かを残す』という一貫したテーマに沿って描かれていると私は感じました。

そうした事からもこのアニメは弱い人間である朋也がヒロインの存在や周りの人との絆を自分の支えにしてなんとか生きていくという、何かにすがる事の美しさと危うさを常に孕んでおり、最終話のどんでん返しまでは心の痛みと共に観る必要のあります。実際渚を失ってから朋也が汐の育児を放棄してしまう辺りなどは、私も観ていて辛いものがありました。しかしこの部分こそがこの作品がブレないで持っているテーマであり、それを視聴者に突き付け続ける鋭さを持っている点が素晴らしいと感じています

{/netabare}


2.幻想世界という現実
{netabare}

一期から登場し続ける唐突とも言える幻想世界のストーリー。その具体的な意味は一期では分からず仕舞いでしたが、二期ではようやくその世界の輪郭が意味を成し始めます。今作は基本的にはとある人間のあるかもしれない日常生活を延々と描く作品ですが、それゆえに幻想世界のファンタジー調の世界観との対比が際立って目立ちます。

私は原作は未プレイですし、今後プレイする時間も無さそうなのでアニメのみを視聴しての感想になりますが、この一見ストーリーの本筋にどう関わっているか分かりにくい幻想世界こそが、CLANNADのテーマを体現しているという意味でリアルな『現実』の物語になっていると思いました。なぜなら『思い出の積み重ねがキチンと人の中に何かを残す』というテーマがこの物語の根幹にあり、現実世界の朋也は決して見る事は出来ない人の想いや思い出に翻弄され続けます。一方で幻想世界の朋也(とおぼしきガラクタロボット)は他人の幸せの光を集めるという形で人の想いを質量のあるものとして可視化出来ており、それを集める事で最終的には奇跡を起こす事に成功します。

幻想世界については深読みをしようと思えばどこまでも出来ますし、無いなら無いで本編の現実世界は物語としては成り立ってしまうものです。ですがだからこそリアルな人間の人生を描こうとする作品にとっての晴らしい味付けになっていると思います。最終話で現実世界の朋也と渚が町に浮かぶ沢山の光の玉を共に見ます。そのシーンが私はとても気に入っており、今作の見所の一つだと思います。

※余談ですが、本編で朋也が光の玉をなぜ『13個』集める必要があったのかについては諸説があるようです。私には色々と考えてみても分かりませんでした。古代のケルト民族は一年を13に分け、それぞれの月に守護樹と呼ばれる木を定めていたそうですが、CLANNADのタイトルもケルト語と繋がりがあるという説がありますし、これも関係あるんでしょうかね・・・。

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3.町が意思を持つという事
{netabare}

ストーリー云々ではなく素直にこの設定が面白いと思っています。町という普段自分達が暮らす素地である場に意思を持たせる事で、別に大地震や災害に見舞われるなどの非常事態で無くとも、人の命というものが自分の意思とは異なる部分で突然終わりを迎えるものである事を浮き彫りにし、それに対する憤りや苦しみをとても上手く表現しています。

一期で渚がステージの上で劇を行うシーンはそうした意味で考えるととても印象的です。秋生の叫びがとにかく印象的な場面ですが、私はあの時あの場所でずっと叶えたかった夢を一人でステージに立ち叶える事で、渚は自分の人生における町の意思を受け入れたのだと思っています。暗がりの中スポットライトを浴びる渚の姿は二期を見終わってから見返すと思わず涙が・・・。どんな人間でも要所では一人で自分の生き方に向き合わなければならず、渚が劇をやるという選択を決断するという事は、自分の後の運命(最終的には救いはありますが)をきちんと自分の問題として見つめる事が出来る渚の強さを表しているような気がしました。

風子の存在もそうした『町の意思』を考える上では深いものがあるのでしょうが、原作をしていない以上色々と考えをまとめる事に今回は限界がありました。ただ、病院に通いながらも最後は自宅で一度は亡くなった渚と、一方長い間病院に入院していた風子が最終的には目を覚ましたという事実は、人にはどうする事も出来ない町の残酷な選択と、一方での命の神秘性のようなものを如実に示してくれているのではないでしょうか。

{/netabare}

黄帝が見たという華胥の世界は素晴らしい『夢』の世界でしたが、この物語は現実と幻想世界が互いに互いの華胥の夢として存在し続けるからこそ成り立つ、美しい物語です。

なんだか珍しくだらだらと書いてみましたが、つまりはとっても面白い作品という事で万事OKです!!何度見ても感動しますし、じっくり楽しんで欲しい作品だと思います。

投稿 : 2014/04/01
閲覧 : 179
サンキュー:

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