westkage。 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
制作陣の作品に対する愛情をタップリと感じる事のできる作品・私にとっての神アニメ!!
本作は「伏見つかさ」のライトノベルを原作とした作品です。
原作は2008年8月から2013年6月まで全12巻で発売。テレビアニメ1期は2010年10月から12月まで全12話で放映されました。今作はテレビアニメ版とWEB放送版が混在しており、始めて観る方は少し困惑するかもしれません。まとめると・・・
・2010年10-12月TV放送 1話~12話(GOODEND版)12話の後半が原作とは異なる終わり方をしているオリジナルエンド版です。今レビューの対象部分です。
・2011年2-5月WEB放送 12.5話~15話(TRUE ROUTE版)TV版の12話後半からの部分が原作通りとなっているバージョンです。2期を視聴する場合はココの部分が必須となりますが、DVDレンタルで視聴の場合はTV版1期と続けてこちらも収録されているため安心です。
あらすじ・・・主人公‘高坂京介’は普通である事をこよなく愛する高校生である。そんな彼には1人の妹が居た。ヒロイン(妹)‘高坂桐乃’は成績優秀・眉目秀麗・容姿端麗の3拍子が揃った今風のギャル。中学生でありながらファッション雑誌の読者モデルも務めており、兄・京介の目指す普通の人生とは間逆の道を進んでいた。妹の桐乃はご近所でも評判が良く両親も娘の活躍に期待を寄せている中、京介は若干ならぬ居心地の悪さを感じながら生活していた。昔は「お兄ちゃん」と慕ってくれた妹とも今では何時最後に会話を交わしたかすら覚えていない程の冷めた関係になっていた。そんなある日、家の玄関で見慣れぬパッケージのDVDを拾う。タイトルは「星くずうぃっちメルル」しかも中身はパッケージとは全く別のモノ「妹と恋しよっ♪初回限定版(18禁ゲーム)」であった。落とし主を突き止めるため家族にカマをかけてみた彼は、妹の桐乃が持ち主だと知って驚く。しかし妹は決して自分のものでは無いと認めず、京介は敢えてそれ以上の追及を止める。DVDを返してやり、妹は素直に部屋にもどるのだった。その夜、京介は強烈なビンタで目を覚ます。見れば妹が自分の胴部にまたがり見降ろしていた。「なっ!おまっ!?」と動揺する京介に「話があるから私の部屋に来て」と桐乃は言った。久しぶりに入った妹の部屋で京介は妹の口から信じられない言葉を聞く「「「…人生相談があるの!!」」」
・・・といった始まりをするお話です。
自分もアニメ・漫画が好きながら敢えてそれを公言する事は無い人生を送っていました。故にヒロイン「桐乃」が抱えている苦悩がストレートに自分にあてはまり、共感に至りました。
今はそれほどでもないと思いますが私が育った時代は「オタク」という呼び名が世間に浸透し始め、アニメが偏見の目で見られている最盛期でした。私より歳が4・5歳ほど上だと「もはや偏見と言うよりは毛嫌い」されているという表現がピッタリかもしれません。それもその筈、昔のアニメはどちらかと言うと「娯楽的要素」の強い作品も多く「ドラマ性」がある作品は稀で、更に現代アニメの様な「メッセージ性」があるような作品となるとほとんど皆無に等しかった状況です。アニメファンから提唱されている「昔のアニメのメッセージ性」を語った所で、それらは作品の外面に表れているものでは無いため「一部マニアの妄言」として扱われ、理解される事も少なかったと思います。つまりは「アニメ=子供騙し」であり、アニメばかり観ているのは「何時までも社会に出られないかわいそうな人間」という意識が強かったのです。更に1990年「宅八郎」なるオタク評論家がテレビに登場。1989年に起こった東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の容疑者宮﨑勤の逮捕によって"オタク"という概念に注目が集まる中、宅八郎は強烈にダサいオタクファッションに身を固めて当時の人気番組である「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」や「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」などに出演し、お茶の間に衝撃的なまでの「オタクの印象」を残していったのです。これが「オタク=気持ち悪い」の由来であると考えても良いでしょう。
時は流れ2014年。昨今では「魔法少女まどかマギカ」などの活躍によりTV芸能人ですらアニメを絶賛する風潮にあり、その様な批判は薄れつつあります。今作が発表された2008年は進化しつつあるアニメ界の、しかし依然として「アニメ=オタク」の意識が世論に残る時代背景を見事に描いた作品であると言えます。
総評として・・・「自分の妹がオタク・エロゲーの妹キャラが大好きであるという設定が斬新!!日常アニメに新しい風を吹かせる事に成功した作品」といった感じです。日常アニメを嫌っていた自分が今作品を初めて見たときは目から鱗が落ちる思いでした。何気なく新しいアニメが始まったので録画しておくかと軽い気持ちで見始めたのですが、気がつけば毎度次回の放送日を楽しみにしている自分が居ました。
またアニメのみならずラノベ界にも大きな影響を与えているこの作品。題名の「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は当時では珍しいタイトル(語り口調)で、その後に発表されるラノベのタイトルに変化が現れました。
・僕は友達が少ない2009年
・中二病でも恋がしたい!2011年
・俺の彼女と幼馴染が修羅場すぎる2011年
・やはり俺の青春ラブコメはまちがっている2011年
・問題児たちが異世界から来るそうですよ?2011年
・俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している2012年
ラノベ原作でアニメ化もされた有名作でいうと、上記のような感じでしょうか?昔はこんなタイトルのアニメも無かったですよね。
☆今作の見どころ1「兄と妹のラブ?コメディ」
メインヒロインが妹という設定の作品はあまり見ない。妹がオタクなんて設定であるなら尚更である。
昔は兄と妹の仲が良く一緒に遊んでいたが、思春期を迎えて冷めた関係になる…なんて事は、ごくごく一般家庭の兄妹であれば見かける風景だと思う。しかし妹の悩みを知り、人生相談をきっかけに2人の距離はどんどん縮まっていく。というリアルではあり得ないような展開が注目を引く要因であると思う。
特筆すべきは設定の秀逸さで、これだけの設定で視聴者に3つの感情を芽生えさせる事に成功している。
1・単純にオタクである桐乃の気持ちに共感できる。
2・実際に妹が居る視聴者にとっては「リアル妹がいかに生意気な存在か」という共感ができる。
3・妹が居ない視聴者にとっては「妹とのラブコメは成立するのか?」という淡い幻想を抱かせる。
☆今作の見どころ2「隠れオタクという存在」
ファッション雑誌の読者モデルにも選ばれる妹が、実はディープなオタクだった。しかも妹は世間体を気にしてオタクである事を隠している、なのでアニメを語り合える友達が欲しい。
…桐乃のように隠れオタクである人たちは意外に多いのではないかと思う。しかし隠れながら楽しんでいるだけに、隠れオタクはいつも孤独である。そんな視聴者にとって桐乃は「やっぱりこういう悩みを持っている人もいるんだ!」という存在になれている。そして彼女がオタク友達を作っていく過程に自らの想いを重ね合わせる事が出来るのだ。
☆今作の見どころ3「毎回変化するOP / ED」
まずオープニング。当時現役中学生ユニットである「ClariS」のデビュー曲「irony」が採用される。Ironyは‘素直になれずにいる10代の少女の気持ちを描いた曲’であり、ヒロインの高坂桐乃が中学生であることからピッタリのテーマソングだ。加えてOPは作画が毎回微妙に変化していく仕様だ。視聴者にとってOPすら楽しみになってしまう粋な試みだと思う。
そしてエンディング。なんと毎回曲が違う。話題性を上げるためか製作費を抑えるためか「ニコニコ動画より一般公募」された曲を使用し、出演声優が歌うといった形をとっている。流石にEDの作画を毎回変えるのには無理があったのか「エンドカード」という1枚絵にエフェクトをかけたものを採用している。しかしエンドカードも毎回変わるため、見飽きる事の無いように工夫されているのも素晴らしい所だ。
☆今作の見どころ4「聖地巡礼」
本作は千葉市近郊が舞台となっており、実際にある施設や街並みが繊細に描かれているのも特徴である。
採用されているロケーションとして・・・
1、千葉公園・京介と麻奈美のシーンで採用。公園の南に位置するベンチも繊細に描かれている。
2、千葉市中央図書館 / 生涯学習センター・京介と麻奈美のシーンで採用。
3、千葉モノレール・OPで採用。期間限定で列車全体にキャラクターがプリントされた「俺の妹号」も実際に運行していた。
4、幕張舟溜跡公園・京介とあやせのシーンで採用。木造のアスレチックもしっかり描かれている。
5、そごう千葉店・OPで採用。表記は「SOSO」となっている。
6、千葉駅周辺・京介のシーンで採用。
7、キュアメイドカフェ・京介 / 桐乃 / 黒猫 / 沙織のシーンで採用。秋葉原に実在するメイド喫茶。
などが代表的な場所だ。
☆今作の見どころ5「毎回変わるアイキャッチ」
丁度話の折り返し地点となるアイキャッチは「1話で京介が拾った桐乃の私物」のようにDVDの箱(CMに入る前)と中身のDVD(CMが終わった後)が毎回違う・・・という工夫がされている。
{netabare}
01話=箱・俺の妹がこんなに可愛いわけがない 中身・俺の妹がこんなに可愛いわけがない
02話=箱・シスターハート2 中身・妹たちとあそぼ♪
03話=箱・ひかりいろショシュール 中身・ぜったい妹主義!!
04話=箱・ケツバット 中身・妹はノーパン主義
05話=箱・恋のバサスティックウェポン 中身・妹ランドへようこそ!
06話=箱・そのイチ1 中身・超義妹
07話=箱・ラヴゲーム+ 中身・シスターコレクター
08話=箱・ジャスティン8 中身・天元突破十二姉妹
09話=箱・ローゼンユウグフラウ 中身・妹はわん娘
10話=箱・Kate starry night 中身・プラこん
11話=箱・銀河TP ゾディアビート 中身・最終兵器妹
12話=箱・俺の妹がこんなに可愛いわけがない12 中身・おにいちゃんのぱんつなんかぜったい盗んでないんだからねっ!
13話=箱・LOVEXXX 中身・妹はオジャマゆーれいちゃん
14話=箱・俺の妹がこんなにきグルみっくなわけがない中身・すきすきおにいちゃん
15話=箱・ギャラクシーアスリーテス 超★運動会 中身・俺の妹がこんなに可愛いわけがない15
{/netabare}
どうでしょう。ホント細かい所を言っていくとキリがないのですが、本作「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は制作陣の作品に対する愛情をタップリと感じることのできる作品です。有名作ですので、視聴されていない方もほとんど居ないのでは?と思いますが、もしいらっしゃるのであれば是非1度視聴してみて欲しい作品です。個性豊かなヒロイン達に萌えるも良し、桐乃の境遇に身を重ねるも良し、細かな舞台裏設定を調べて観るのも良し…とにかく沢山の楽しみと愛情を感じられる作品です。
私にとって、神アニメといえる文句なしの作品でした☆