STONE さんの感想・評価

4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

贖罪が生む狂気

　原作は未読。
　全体的な印象はテレビシリーズに較べてハードなタッチで、ストーリーもテレビシリーズが
主に裏社会の抗争を描いていたのに対して、国家レベルの謀略がベースになるなど、スケールが
大きくなった感じ。

　話の中心になるのはロベルタ。テレビシリーズのゲストキャラの中でもとりわけ印象が強烈な
キャラだっただけに、まずは再登場が嬉しい。
　怪物っぷりは相変わらずで、テレビシリーズでは「ターミネーター」(もしくは
「ターミネーター2」のT-1000)のごとき印象があったが、本作の終盤でのゴールデン
トライアングルの戦闘においてはなんか「プレデター」を思わせた。
　彼女のロアナプラでの行動は、主を殺されたための復讐であるが、根底にあるのは自分の
過去に対する贖罪。これは復讐を果たしても癒されることはないもので、結局は自己を破滅に
導くための行動になってしまう。幸いにしてガルシアの命を賭けた説得によって破滅からは
逃れることはできたが。
　ロベルタの生真面目な性格でこうなったのかもしれないが、現在の自分に納得できなくても、
折り合いをつけて生きているレヴィやバラライカが、もし心の平穏を得られるような何かに
出会った場合、過去の自分に対してどういった思いを抱くのだろうか？。ロベルタを見ていると
そんなことを考えてしまった。
　本作における戦いで、ロベルタの肉体的損失はかなり大きく、おそらく戦士としての再起は
もうありえなさそう。メタ的な部分では、人気キャラだからといって、更なる登場の余地を残す
ことなく、ストーリーに即してここで終わらせたことにある種の潔さを感じる。これはテレビ
シリーズの他のゲストキャラ(ヘンゼルとグレーテル、鷲峰雪緒と松崎銀次など)に対しても
感じていたことではあるが。

　もう一人印象深かったのがロック。
　テレビシリーズにおいて何度も辛い目を見た彼だが、相変わらず彼の青臭い信念は
変わらない。むしろ失敗を重ねることでよりその信念は強固になっているようだが。
　今回はようやく一矢報いた感があるが、その方法はだいぶロアナプラ流になってきた感じ。

　ロベルタ、ガルシア、ロックの3人の信念がストーリーを動かしていたような印象で、
そのためにラグーン商会のいつもの面々の影が薄かったのがちょっと寂しかった。特にレヴィ
にはもっと活躍してもらいたかったかな。

　OVAゆえにテレビシリーズほどスケジュールがきつくなかったのか、絵がきれいになって
いたのが嬉しかった。第2期は「うーん・・・」と思うような作画が結構あったので。