yuki24 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
エヴァンゲリオンは3rdインパクト?
最終2話はまさに唖然。開いた口がふさがらなかった。
この2話のためだけでも見る価値があるかもしれない。
永遠に終わらない最終話。
ミロのヴィーナスじゃないけど、逆にこの作品の神秘性を高めている気がしないでもない。
皮肉にもこの2話がいろいろと物議をかもしたことで認知度が高まったらしい。
ここから固い話です。
エヴァンゲリオンがおこした革命はセカイ系という新しいジャンルとその派生形である。
セカイ系
主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと
「具体的な中間項を挟むことなく」とは国家や国際機関、社会やそれに関わる人々がほとんど描写されることなく、主人公たちの行為や危機感がそのまま「世界の危機」にシンクロして描かれることを指す
代表作 新海誠のアニメ『ほしのこえ』、高橋しんのマンガ『最終兵器彼女』、秋山瑞人の小説『イリヤの空、UFOの夏』
(出典 wiki)
空気系
たわいもない会話や日常生活を延々と描くことを主眼とした作品群
代表作 『らき☆すた』『けいおん』『ゆるゆり』
物語は「近景/中景/遠景」の3つの領域に分類できる。
テニプリの場合
近景=青学テニス部
中景=青学、家族、他校など青学テニス部をとりまく環境
遠景=全国優勝
このように青学テニス部が全国優勝という目標を達成するためには青学での学校生活・練習があり、家庭での生活・家族の支えがあり、他校との交流・試合というプロセスが必ずある。
セカイ系の場合
近景=きみとぼく
中景=なし(社会領域のほんの一部)
遠景=世界の滅亡
中景をほとんど描かないというのは物語におけるプロセスを削ることに他ならず、物語性を希薄にする。
空気系
近景=きみたち
中景=なし(社会領域のほんの一部)
遠景=なし
セカイ系と異なる点は以下の2つ
・遠景を切り取ることでプロセスがなくなり物語性を排除 していること。よって時間は存在しない。
・ホモソーシャルなコミュニティ(女の子だけの空間)を
作ることで恋愛という物語性を排除
セカイ系の流れからさらに物語性を希薄にする、というのは当然の流れに思えるが、「きみとぼく」の世界観を残した場合、ただの恋愛もの(遠景に恋愛)として付き合うまでのプロセスを描く物語になりかねない。そこで男性を恋愛という要素とともに消し去るわけだが、そもそもセカイ系の世界観では「世界の滅亡」と「きみとぼく」の恋愛はリンクしているのだから遠景とともに恋愛という要素が消え去る、ということには必然性がある。
空気系が生まれた背景
・セカイ系後の物語を語る難しさ
・二次創作意欲を掻き立てる魅力的なキャラを並べることで 人気を得た
があるがセカイ系と空気系の相違点はこれに対する答えになっている。物語性を排除しているのでそういった意味での難しさを回避できるし、ホモソーシャルなコミュニティはそもそもそういった需要に応えるものであった。(要は男がいてもじゃまなだけ)
個人的には男がいない不完全な世界というのが見る側に介入したくなる状況を生んでいると思う。エヴァンゲリオンの最終2話がいろいろ物議をかもしたように。
友達以上恋人未満、でもそれ以上発展してはいけない。その微妙なバランスがいい。これが百合(だと思っている)
革命的なアニメというのがいくつか存在する。たった1本のアニメがその後のアニメ業界を大きく左右する、そんな作品。
1970年代 アニメブームの火付け役となった宇宙戦艦ヤマト
1980年代 ロボットアニメの変革の先駆けとなったガンダム
1990年代 エヴァンゲリオンを鏑矢とするセカイ系
ゼロ年代 セカイ系から派生・融和して空気系、バトルロワ イヤル系、るーぷもの、セカイ系への自己言及的 応答作品、現代学園異能、百合、戦闘美少女、日 常の謎など色々な作品群
2010年代 第4世代???
(第一世代がヤマト、2ガンダム、3エヴァらしい)
最後に第4世代の可能性について
アニメは見るもの、これは当たり前。でもアニメの楽しみ方は1通りではない。二次創作としての同人誌は当たり前の時代。空気系が示すようにアニメの製作も二次創作を前提にしている(ものもある)。そこに可能性があるのではないか。2次的な活動は二次創作に限らず、原作を読む、アニメで流れた音楽を聴いたりカラオケで歌う、そのアニメについて意見や感想を交わし交友関係を広げる、関連商品を集める、そのアニメのゲームをする、アニメに出てくるサブカルチャーに触れる、聖地巡礼…
このネット社会、見るという受け身の状態からもっと主体的な行動を取れるはずだ。こうした2次的な活動に革命的な変化をもたらす作品。それが第4世代の作品だと思う。つまりアニメは二次的な活動を想定に入れ、そうした活動の意欲を掻き立てるもの。そして二次的活動をサポートするインフラとまとめて作品であるという認識だ。
ちなみに空気系はほとんどが学校や家の近所など現代日本の日常生活空間ですごします。これはアニメの中にリアルをもぐりこませることで二次的活動を誘導しているからだそうです。けいおんでギターが売れたりとかってまさにそういう例だと思うんです。ガンダムとプラモデルのように革命的な二次的活動を提案、かつインフラの提供が鍵になるのでは?
4thインパクトに期待です。
最後まで読んでくださった方ありがとうございます。