らしたー さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
特殊であり、画期的であり、しかし「伝統的」
全国大会編が始まるというので、今さらちゃんとみた。
自分みたいに、辛うじて役を知ってるレベルの知識しかないくせに、むやみやたらと麻雀を扱った漫画やアニメに手を出す人間って一定数いると勝手に推測している。
たとえ「そこで北を切ることの凄味」はまったく理解できなくても、相手の「ぐぬぬ…」なリアクションや、丁々発止のやり取りが、それだけで「雰囲気モノ」として鑑賞に値する仕上がりとなっている良作が多いからだ。
そこで咲ですよ。まったくの麻雀門外漢ですら、「消えるのは反則だろ!」と、かつてないくらい健全なツッコミができる懐の深い作品なわけだが……。
く、くやしいけど面白いよう。
なんでこんなもので……ビクンビクンという意味不明の満足感を覚えてしまったのだけれど、よくよく考えると萌え系コンテンツの企画としてほとんど外しようがないくらい鉄板の作りをしている点で、自分の中では人気が出て当然という結論になっている。
「これだけ女子がいれば誰か気にいるでしょ?」という豪快なベースの敷き方しかり、成功テンプレな少女たちに麻雀という不似合いなエッセンスを掛け合わせることで、まるで数学の分配法則のごとく一様にエキセントリックな印象付けをしている計算高さしかり。
ともかくも、「美少女がやる麻雀」ではなく「麻雀をやる美少女」に娯楽性を収束させているところがとてつもなく上手い。上手いだけでなく、ちゃんと萌コンテンツとして勝負してるのだ、という矜持がある。
そのブレない姿勢だけで、十分に正義であり正解だと思うわけだけど、麻雀作品におけるエポックメイキングと位置づけらることも多い本作において、地味にいいなと思ったのは、対局中の私語がほとんどないこと、である。
多くの麻雀作品では、なぜその牌を切ったかなどのタネ明かしを、わりと口頭でペラペラやっちゃうのだけど、公式試合での咲たち少女雀士たちは、対局中に意外なほど会話というものをしない。演出上、心の声はふんだんに使われているが、対局中に直接口頭でコミュニケーションをとることは滅多にないのである。
それが大会のルールなのかどうかは知らないが、麻雀をスポーツとして構成したこの作品のこだわりを感じさせる、すばらしい演出だと感じた。スポーツなればこその爽やかさを感じることができた。
従来の麻雀作品が、知略と度胸のぶつかり合い、大げさに言えばギトついた「魂の対決」だとしたら、この『咲-saki-』は、雀卓というスポーツフィールドで戦うキャラクターたちをいかにして魅力的に見せるかという方向に、あけすけなまでに全労力を割いており、その点が麻雀作品としては極めて特殊であり画期的でありながらも、一方で「競技モノ」の手法という点ではある意味で非常に「伝統的」なんだと思った。
ついでに舞台が自分の出身県である長野ってのも嬉しかった。
視聴中はまったく気づかなかったが……。