bk958 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
『今こそおすすめしたい劇パトⅡ』
◆あらすじ
テクノロジーが発達し、歩行型作業機械"レイバー"が広く普及した時代。"レイバー"を使用した犯罪が増え、警察は"レイバー犯罪"の専門部署として『特化車両二課中隊』通称『特車二課』を設けた。その特車二課の面々とパトロールレイバー通称"パトレイバー"の活躍を描いた作品。
◆おすすめ
映像化されたものでOVA、TV版、劇場版とあるが、あんまり見過ぎると特車二課に愛着がわきすぎて、『劇パトⅡクソだわ』ってなる確率が上がるのでおすすめできない。
まだ観ていない人は是非、劇場版Ⅰ→劇場版Ⅱ→それ以外という流れをおすすめする。
というのも一作目は、劇場版から入っても十分に楽しめるという完成度の高さで、特車二課やレイバーの活躍と押井さんの作家性が程よくブレンドされバランスが良い。
近年でもアニメありきのファン映画が多い中ではとても貴重な作品。
二作目はより作家性が強くなるが、日本の平和のあり方に一石投じるテーマは憲法改正の気運が高まる今、大いに考えさせられる内容なのでオススメしたい。
↓以下ネタバレ↓
{netabare}
◆ここが良かった
公開当時(1993)に都市におけるテロを取り上げたり、その武器がガス兵器だったりその先見性は相変わらずすごい…
とリアルタイムで観ていない僕が評価するのもおかしいが(笑)、物理的に不可能だったからしょうが無い。今観たらよりリアルという先見性は評価せざるを得ない。だって、実際に起ってるんだもの。
更に、テロリスト側である柘植という男が都市システムを掌握していく様はかなり見応えがある。特車二課にとって敵であり、あまつさえ主役機のレイバーをヘリでぶっ壊すにもかかわらずあのワクワク感。
押井監督の軍事描写やスクランブルのカッコよさと緊張感はそれだけ素晴らしく、その過程は実験的で面白い。
この作品が気に入るかどうかは、パトレイバーとして見るかにかかっている。劇中で主人公の泉野明が「いつまでもレイバーが好きなだけの女の子でいたくない」と言い放つのは衝撃的で、監督の俺パトレイバーなんてやんないよ宣言でもある。
劇場版からおすすめするのはそのためでもある。
◆南雲隊長の恋愛事情
ただ、一個だけ苦言を呈したい。こんだけリアリティ溢れる設定、シナリオなのに、それに比べて女性関係のリアリティの無さ!
能力はあるが左遷されたという設定の南雲さんの過去は、まだ手を付けていないおいしい設定だし、不倫というのもなんか妙にしっくりきた。
だけど、最後に南雲さんが柘植を選ぶというのは断固としてないと言いたい。
女性が男性を見切るタイミングってすごく合理的だと思うし、今でこそ結婚以外にも社会で生きていく術が多くあるけど、それでもあそこで柘植を見切れない女性なんていないでしょ。
なにより、僕の抱いていた南雲隊長像を返したまえ!
海外にPKO派兵されて発砲を許可できなかった柘植の悲劇は同情できるけど、それで軍隊のシステムを嘆こうが、上層部を恨もうが知ったこっちゃない。それを日本国民に押し付けるって頭おかしい(笑)し、とてもカッコ悪い。
しかも、現状の日本に警鐘を鳴らす役割というのがどう考えても押井さん自身にしか見えない。テロリストでありながら妙にヒロイックに描かれてるし。女性はこうあって欲しいという願望に見えて…。
{/netabare}
ただ、主題に対してこのドラマはおまけ程度でしかないし、20年たっても存分に楽しめるというのはすごい作品だと思うので、目をつぶってオススメするようにはしてる。
同じ押井作品でも、全く共感できなかった『イノセンス』もいつか素晴らしさが分かる日が来るかも知れない。