bk958 さんの感想・評価
3.9
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
『作品内リアリティの在処』
作品内のテーマだったり、見どころでの演出だったりはホントに素晴らしくて、ポスト宮﨑駿とも囁かれる細田監督の面目躍如な出来。
子どもたちの無邪気さやそれぞれの自立を描きつつ、細田監督の描きたかった母親像が覗える。
子供の成長を自然に描けることや、おおかみこどもという突飛な設定もアニメならではのもので、他では味わえない作品になっていることは間違いない。
ただ、ラストに至るまでのハードルが高すぎて評価が二分するのもまあ納得で、僕自身いまいち入り込めなかった。
というのも作品内のリアリティがどこにあるのか分からないので、フワフワした気持ちで花ファミリーの行く末を見守る羽目になった。家族モノはもっと安心して観たい。
最初に引き合いに出したジブリと比べてみても、ジブリ作品を観たあと『あそこありえねーよな』って言ってる人はあまり見かけない。それは世界観をすぐ理解させるための計算された描写であり、宮﨑駿独特なアニメーションの技術であり、ジブリスタジオが築いてきたイメージのおかげである。
僕は自宅で人と一緒に観たのだが、特にアニメ好きでもない人にも疑問を抱かせる程度にはリアルとファンタジーのバランスが悪い。
この作品内のリアリティでごまかしが効かない部分といえば、やはり狼の存在ということになる。
{netabare}
そもそも、計画性をもって大学に通い、人並みの道徳観も持っていそうな花が、あんなふらっと出てきた狼男に惹かれ子供まで作ってしまう。しかも二人も(笑)『ビッチ乙ww』で済ませてもいいけどそれじゃ多くの人にとって感情移入は当然できないわけで。
さも普通の恋愛のようにベッドシーンまでいかれても、『花…どうしようもない変態さんですね』くらいしか思えない。
他の部分でも、母親としての花はスーパーウーマンそのものでファンタジー以外の何ものでもないけど、妙にリアルな児童相談所が来たり、狼男は生々しくゴミ収集車に回収されたり、ギャップがすごすぎてどう捉えればいいのか。
雪が体調を崩したとき、動物病院行くか普通の病院か迷ってましたが、おおかみこどもあるあるとかわかんねーよ(笑)
ただ、BGMと演出は素晴らしかったと言いたい。家族で雪山に行くシーンとか、雪のカーテン越しの告白とか、個人的には雪と雨のいる教室を交互に移して成長を見せてくシーンが好きすぎて何回も見てました。
{/netabare}
あと雪の声優さんもよかったなあ、とか良い部分も記憶に残ってるのに…もったいないなあという印象でした。細田作品は好きですが、一番評価が分かれそうなので観てない人に勧めづらい作品です。