遥か彼方 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「ああ・・・・・・いい話だ」
蟲師の魅力全開でした。
始まってから、昔話の大人版の様な良い意味で古ぼけた妖しげな雰囲気と昔話さながらのナレーションで一気にこの作品の世界に引き込まれますね。
日蝕が始まる中で雰囲気に合った美しくもどこか不安を掻き立てるBGMがより静寂を引き立てていました。
決まった時間に御天道様が顔を出す、日の光を受けるのが当たり前の人間の世界。
でもある日突然それがなくなったら?
それがなくなった為外に出る喜びを知る事が出来る少女が一人。普段は生まれる前に母が浴びた蟲のせいで、太陽の下には出られない少女。
作物も枯れ村の皆が日毎に不安に食い潰されていく中、彼女だけは
「このままが良い」
と願う。外に出るのが彼女の願いで日蝕の間はずっとそれが叶うから。
だが村の皆は蟲師であるギンコの言う通り、半信半疑ながら蟲の根を渋々探す。
生まれながらにして蟲に蝕まれた少女には双子(?)がいる。
片方が蟲を取り入れた事で片方は太陽の光にも適応出来ている。
自分に気を使う彼女に向かって「自分と変わってよ、あんたなんかいなければ」と言い捨ててしまう少女。
お気に入りのいつか二人で見たいと思っていた美しい花園で、彼女は願う。
「私なんていなければ・・・」と。
その瞬間蟲に囚われて普通の人には姿が「見えないもの」となる。
双子の片方にだけ彼女の姿が見える。
自分の暴言を後悔しどうしたら彼女が治るのかと尋ねると
ギンコは
「一生懸命話しかけてやる事だ」
と答える。
そして蟲の根が見付かり村人が協力してそれを御天道様を蝕んでいる蟲へと返す。
日蝕が終わりを告げる。
太陽の下に行けなかった彼女はそれを機に蟲が浄化される。
だがもう片方の「見えない」彼女はまだ蟲に侵されたまま。
それでも懸命に声をかけ続ける。
「そこまで反応しているなら、後もう少しで元に戻るだろう」
そう言ってギンコはその村を後にする。
簡単なあらすじはこんな感じです。
以前観た蟲師の良さが一時間に凝縮されていました。
この蟲師と言うのは、蟲と言う人間には得体の知れない「もの」に憑かれた人間達を蟲師である(蟲の医者みたいなもの?)ギンコが祓っていく、自分はそんな感じで捉えているのですが、一見大した事が起こらなさそうな雰囲気で始まり、段々と予想を超えてとんでもない事態にまで発展していき、最終的には完全な大団円は少なく、でもどこか救いがある・・・毎回そう言う展開で終わるイメージが有ります。
そこには人間の本質を問う物語や、ドラマ性の有る生き様も多く不思議な寂れた雰囲気もさることながら、蟲に憑かれた理由、そしてそれと対峙し、それを退治するまでの人間ドラマがとても丁寧に描かれています。
今回もそうでした。
御天道様が出なくなったら人はみるみる内に大切なものを無くしていく。物理的なモノであり心理的なものでもある。
だがその状態を心から喜べる人間がいたらどうなのだろう。
この問題提起から始まり「ひなたは私に取って『ひなた』だった」と言う大切な結論に至るまで、それぞれの葛藤や焦燥が入り交じり目が離せない。
最初は軽い気持ちで観ているものが、その回が終わる頃には完全に物語に引き込まれている。
今回も素晴らしい蟲師らしさだったと思います。
まだこの作品を一度もご覧になられていない方に、今回の「日蝕む翳」是非お勧めしたいです。
これを視聴されれば蟲師の独特の世界観、ギンコのミステリアスな魅力、蟲を上手く扱ったドラマ性など、どれか一つでもお解り頂けると思います。
最後に、念願の蟲師四月続編おめでとう!
これを観たら一層楽しみになりました。
続編も今作の様な魅力的な作品を期待しています!