セレナーデ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
萌えとゆるさの裏に、熾烈な弱肉強食の世界を見た
なんとまぁ、恐ろしい。
「ひたすらゆるい日常系」の確固たる地位を確立した本作において、個人的に妙に印象に残っているのが、「つかさとゆたかが一緒にウエハースチョコを食べる」という、シーン・・・というよりカットです。
ここは、食玩のお菓子ってついないがしろにしちゃうよねーという、大人のダメさを弄ったあるあるネタのシーンの一部なんですが、その裏でひしめいていた熾烈なポジション争いに目が行ってしまいました。
シリーズ前半はゆたかを除くメイン4人を中心に展開していくわけなんですが、つかさはその中で最もフェミニンなキャラなわけです。妹キャラで、か弱くて、ほんわかしてて、と。
そんなつかさの特権だったのが「物を両手で持つ」という仕草です。
例えばクッキーなんかのお菓子を食べるときには、ハムスターのように両手で持ってとっとこ食べるわけです。
一言で言うとあざとい。あざといことこの上ないけど、その仕草が絵になるつかさだからこそ許されていた技とでもいいましょうか。
言い換えると、その仕草をさせてもらっている内は・・・という、萌え的ポジションを確保する一種の生命線なわけです。フォークすら両手で持つんだからマジで余念がないです。成人したらたばこも両手で吸いだすんじゃないか。
ところがシリーズ後半、つかさよりも強力なフェミニンアイテムを引っさげた、ゆたかなるキャラが登場。妹キャラで、病弱で、世間知らず(オタ的な意味で)と、守ってあげたい的要素てんこ盛り。要は、その部分でつかさとキャラが被ってるわけです。
そしてゆたかも物を両手で持つというスキルを身に付けてるもんだからさぁ大変。そんな2人が同じフレーム内で同時にウエハースチョコを食べた日には、一体どうなってしまうのか。
2人一緒にハムスター持ちで食べるという特徴的でB級的シュールさに満ちた画なんて、京アニのA級バランス感覚が許さない。
結果、つかさが片手で持って食べた。フォークや携帯すら両手で持ってたあのつかさが。そしてそんなつかさをわき目に、ゆたかは両手でウエハースチョコを頬張るのである。
なんと、なんという弱肉強食の世界。
片手でお菓子を食べたそれは、まさにつかさがひとつのポジションを奪われた証左ではなかろうかと。少なくともそのカットには、「お前とはか弱さのレベルが違うんだよ黙って片手で持ってわたしを引き立ててろよbyゆたか」みたいな、冷然たるヒエラルキーが確かに存在していたのではないかと。
脱力したゆるい作風がウリの本作において、垣間見えるこの熾烈なまでのエグい椅子取りゲーム。
小神あきらの二面性とか霞んで見えます。
●ふざけているようで、実は真面目
マジなレビューをひとつ言わせてもらいますと、引っかかりがあるというか、人を選ぶポイントがあるとすればセリフ関係でしょう。
とにかく真面目。4コマでいう3コマ目まではあるあるを画で表現しておいて、オチの部分で3コマまでに起こったことを「なんで○○って○○の時○○になるんだろう」というように、懇切丁寧に全部セリフに起こす。ツッコミなんかも1ボケに対し逐一分かりやすくつっこむという堅実な姿勢が伺えます。
個人的には「つっこまない笑い」が結構好物なので、そういう意味では本作の笑いは肌に合わなかった部分があったかも。どっちかというと雰囲気とか空気感が好きで観てた感じ。
雰囲気ものとしては、大変優秀な作品だと思います。
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あとどうでもいいけど、こたなが「ここにイリスが入ったのか」と自分が初めて京都駅に行ったときと同じ感想言っててワロタ。