退会済のユーザー さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
タイトルなし
えっと……主人公、怖すぎます;
だってこの主人公、異世界の住人を現実に生きてる人間と思ってないじゃん……。
というかこの主人公、異世界=現実って認識になっていないよね?
本作の主人公は、オタクで引きこもりだ。幼馴染に振られたことをキッカケに、学校のクラスメイトと顔を合わせづらくなって避けていくうちに立派な引きこもりになったんだ。
なのにどうして、こうも異世界の住人相手だとなんの支障もなくコミュニケーションが取れているのか? これが不思議でならない。
作中の描写から、設定上の主人公のバックボーンが一向に見えてこないんだ。
思うにこの主人公、オタクの中で最も危険で悪質である、現実と空想の区別がついていないタイプ。ミュセルやペトラルカとのファーストコンタクトであれだけハッチャけてる時なんて、ノリが「二次元のキャラに出会った」状態じゃないか。
彼がこんな恥知らずの行動を起こすのも、そもそも彼が異世界を現実だと思っていないから。彼にとって異世界は、RPGツクールみたいなものでしかない。
ミュセルの生い立ちを知った時も、基本的に二次元で知ってるから気にしないよ、ってスタンス。
本物のオタクが、いくら美幼女を目の前にしたからといって「幼女キター!!」って叫ぶワケないじゃん。周りに兵士がズラッと並んでる場面で。
この時点で、主人公から感じる胡散臭さが半端じゃない。
もっと言えば、引きこもりニートっぷりを一切描かずにいきなり職探しの描写から始まって、しかも面接で普通に受け答えして「御社は~」と言ってる時点で設定が破綻してる。
おまけに、異世界へ行ってからというもの、日本へ帰りたいとか、家族に会いたいと思う描写がないことも、人間味の希薄に繋がってる。なにコイツ、存在がファンタジーじゃん……。
主人公の最も恐ろしいところは【自分の居場所欲しさに異世界に文化侵略を仕掛けてるところ】だ。
ここら辺はまぁ100%僕の妄想でしかないので流し読んでくれればいいのだけど、この主人公、幼馴染に振られたことで現実での居場所を失ってしまった。
振られたその理由が「オタクだから」。主人公が作中で度々みせる、差別意識とか王権主義への反発心は、この出来事が原因だ。
だから、帰りたいと思わない。だって、主人公にとって異世界は、自分が夢見た二次元の世界であり、絶好の逃避場所だから。優遇された逃避場所で、自分の望む世界――区別とか決めつけのない、平等な世界を築こうとしている。その異世界がどういう経緯で今の体制になり、今の体制であることがどのようなメリットデメリットを生み出してるかをろくに調べようともせず。
しかも、彼の口から出る言葉は大した努力もしない引きこもりの薄っぺらい主張でしかなく、創作物から引用した程度の言葉しかない。
主人公の行動は、ひるがえって「認められたい」という欲求からくるものでしかないんだ。
だから、ペトラルカにあんな形相を向ける。ペトラルカに代表される差別意識は、主人公の望む世界には必要ないから。
自分は侵略しても、相手から侵略されればひとたび表情を一変させて攻撃的になる。こんなに気持ち悪い主人公がいようか。
……この作品が全面コメディであったなら、ここまで不満に感じることもなかった。
この作品、シリアスをやるにはあまりに薄っぺらい。
現実では他国に侵略される一方の日本が、他国を文化侵略するというシチュ的な面白さはあっても、実質それに見合った中身を展開できたとは言い難い。
だって、侵略したってオタクカルチャーじゃん。オタクカルチャーで侵略して結局、なにがしたいの?
そもそも、異世界側がオタクカルチャーを取り込むメリットってなんだよ。
……いや、分かるよ。結局は異世界×オタクって題材はコメディを盛り上げる為の舞台でしかないってことは。
でもさぁ、せっかく面白い設定なんだし、そこ掘り下げていってくれてもいいと思うんだ。
それか、せめてツッコミどころをなくしてくれ。ミュセルの、まったく隠す気のなかった耳の描写からの種族差別と語られても、困る。じゃあなんで国賓扱いの主人公専属メイドがハーフエルフなんだよ。
(魔法の実力が凄いってのが理由かもしれんけど、後々出てきた学校の生徒と比べてそれほど優れてるようには見えない……)
この作品の真価は、王道なファンタジーキャラやヒロインが、新鮮に思える点だ。
ミュセルやペトラルカ、生徒のロミルダとか、キャラとしての造形自体は珍しくないのに、三割増しぐらいに可愛く見える。これ中心にすればいいじゃん。なんでシリアス入れるかなぁ……。静止画を挟んだシュールな笑いとかは良いのになぁ。
とりあえず、自分に課せられた仕事や身分に甘んじない異世界側の住人との交流を経ても主人公に一向に変化が見られないことが残念に思う。