逢駆 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
~一刻千金~
あの日止まった時間が動き出す―――――
全11話という少ない話数のなかに感動が凝縮された素晴らしい作品です。
ストーリーとしては単純なのですが毎回すごく惹きつけられたのは
「青春時代の懐古」や「過去と向きあう勇気」がうまく描かれていたからだと思います。
まず声優の方々に関してですが、
人物の感情はもちろんのこと台詞のないシーンにおいても作画を上回る演技の数々。
特に最終話で6人それぞれの心の内にある想いをさらけ出すシーンであったり、
めんまの手紙を見てみんなが泣くシーンは迫真の演技が心に刺さり本当にぐっときました。
このキャスト陣だからこその見事な芝居だったと思います。
音楽についてもどれも世界観にとてもマッチしていて感動しました。
『まだ二人はすぐそこにいるのに「どうかまた会えますように」なんて、どうかしてるみたい…』
OP曲のサビ部分の歌詞ですが、これが物語中盤のじんたんの想いを言葉に乗せているようでした。
またOPとEDは曲だけでなく映像にも注目してほしいです。
どちらもその2分弱の映像の中に「あの花」のメッセージがぎゅっと込められていて
ひとつのストーリーになっているように感じました。
さらに最終話がOP曲で終わったことも良かったです。
過去のトラウマを乗り越えて一歩を踏み出していく5人の気持ちをうまく表現できていました。
本作は何気ないカットにキャラの心情や立ち位置が埋め込まれていることが多かったように思います。
例えば1話。じんたんの作るラーメンにその時の彼の煮え切らない感情が反映されていたり、
時々ふと、めんまの足元のカットが出たりすると、やっぱり死んでるんだなと実感させられたりします。
そういった細かい描写で心が揺さぶられることも多々ありました。
また小粋な演出だなと感じたのは、作中にときどき出てくるふたつの「花」
ひとつは「勿忘草」。めんまが最後に座っていた場所に咲いていた花。
そして「ハルジオン」。牛乳瓶に供えられていた花です。
それぞれの花言葉を本作のメッセージとして考えてみると、
勿忘草:花言葉『私を忘れないで』・・・めんまからみんなへの想い
ハルジオン:花言葉『追想の愛』・・・・みんなからめんまへの想い
そういう風に自分は解釈しました。こういう演出ってとてもロマンチックで素敵だと思います。
作中の台詞によく出てくる言葉「変化」
変わらないようで変わったもの。そして、変わったようで変わらないもの。
人物に限らずたくさんのこの変化という部分が絶妙に表現されていて良かったです。
めんまを失ったことで、みんな罪悪感のなかで救われずにいました。
しかしどれだけ環境を変えようと、その過去を赦さなければいつまで経ってもその過去は憑いてきます。
めんまと再び出会い、過去の自分と向き合って赦すことができた5人は
これまでのこと、そしてこれからのことを愛し、あの花の願いを叶え続けていくのではないでしょうか。
ノスタルジックな雰囲気に包まれた、ひと夏の奇跡。とても儚くて繊細な物語。
それが『あの花』だと思います。