cross さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
お堅いテーマをオタクネタの乱用で取っ付き易く仕上げ、コメディ色の強い作品ながら全体を通して物語も纏められていて好印象。【総合評価:72点】
2013年秋に全12話で放送された作品。
大まかな概要としては……
主人公は過去に幼馴染にオタクであると言う理由で告白するも振られ、そのショックで引き篭もりになってしまった青年。
ある日、オタクの求める求人を目にし、オタクとしての知識を試す一次試験を合格
その後、面接に出向くとその場で内定を頂くが、意識を失い、気が付けば異世界にやってきていた。
その異世界は、日本と繋がっていて、豊富な資源と引き換えに、娯楽文化が未発達である異世界に今や日本が誇る文化であるオタク文化を提供すると言う国交が結ばれる。
主人公が内定した職、それは娯楽文化に乏しい異世界に日本の誇るオタク文化を伝える会社の総支配人、つまりオタク文化の伝道師となると言う国家プロジェクトの一員になる事だった。
魔法やドラゴンと言ったファンタジーの世界にやってきた主人公は完全に異なる価値観を持つ異世界にオタク文化を広める為に奮闘する姿を描いています。
何かと先入観や偏見の対象となって差別されるオタク
自らもそんな経験をしてきた主人公は、異世界でも当然の様に存在する先入観や偏見や差別に対して真っ向から向き合いながら、オタク文化の普及に尽力していきます。
異文化交流に先入観や偏見、そこから生まれる差別に向き合う、作品としてのテーマ性はしっかりと定まっています。
しかし、それを描く中でオタクならではの思考などをネタとして乱用するので、テーマ性の割りにノリは物凄く軽く、その点でのアンバランス感は否めませんが、逆を言えばお堅いテーマを取っ付き易くする効果はかなりあった様に思えます。
実際、異文化交流、先入観や偏見や差別、この辺りが徐々に緩和される流れはコメディ調の中で笑いを交えつつ、やんわりと処理されていきます。
序盤はオタク文化など全く無い世界でオタクの主人公の言動に周囲が完全にポカンっと言った展開です。
中盤辺りからは、オタク文化が異世界でもそれなりに浸透し、主人公の頑張りもあって異世界に存在していた先入観、偏見、差別についても考え方が次第に良い方向に変わっていきます。
ですが、活動が順風満帆となってきたあたりから、異文化交流やら先入観、偏見、差別と言ったテーマに対しては概ね落ち着きが見え、コメディ色が更に押し出される形になります。
その流れには、この作品はただのキャラクターの可愛さとオタクネタに終始するただのコメディで終わるなと視聴断念も考えたくらいでした。
しかし、終盤で日本が異世界にオタク文化を提供する真の目的が明かされ、物語は再び動き出してからこの作品の面白さは一気に増したように思えます。。
{netabare}『文化による侵略』
そもそも階級社会であった異世界では階級の低い民衆は読み書きすら出来ない者も多い。
そんな中、日本の娯楽を広めて低い階級の者にもそれを広める事で異世界の言葉よりも日本の言葉を広める。
そして、価値観すらも徐々に支配していき、オタク文化の供給量を調整する事で異世界側にオタク文化に対する飢えを生じさせ、オタク文化を餌に支配していく。
まぁ、文化による侵略、非常に言葉としても戦略としても凄い気がします、それがオタク文化ってところがかなりシュールではありますがねww
終盤で明かされたオタク文化を持ち込んだ真の目的。
それこそこの作品のタイトルにもある『アウトブレイクカンパニー』を如実に表していた事に視聴していて軽く衝撃を受けました。
それまでのノリがあまりにもオタクネタ乱用のコメディとしてしか見ていなかった為、徐々にオタク文化が浸透していく過程
その浸透の速さや、熱中具合、全てが思惑通りで伏線となっていたのだなと分かった時、それまでの軽いノリとの落差がかなり効果的に作用して、一気に作品の評価が上がりました。{/netabare}
視聴者と同じ立場で終盤にオタク文化を持ち込む真の目的に気付く主人公が自分の活動に対し疑心暗鬼になる姿。
そして、知りすぎた人間に対して取られる政府の暗躍に晒され、最後にはそれを暴いて一件落着。
12話の尺でしたが、当初思っていたオタクネタ乱用のコメディでは無く、全体を通して物語が構成され、しっかりと纏まっていました。
そもそも、資源とオタク文化の取引とか成立しないだろ、とかツッコミどころは満載ですが、まぁ視聴する際はあまり細かい点は気にしない方向で臨まなければこの作品は視聴できないでしょう。
ですので、視聴の際はどうか細かい点は流して視聴をお願いいたします。
テーマ性は結構真面目ながら、そこをオタクネタを乱用し、軽いノリに仕立てています。
そのアンバランス感をどう捉えるかもこの作品を視聴する上では重要ですが、お堅いテーマを取っ付き易くする為の手法と思えば視聴し易いかもしれません。
タイトルとかで敬遠される方も居るかもしれませんが、タイトルから想像するよりも内容も物語もちゃんとしている作品です。
特に終盤のオタク文化提供の真の目的が明かされる辺りの流れはそれまでの軽いノリとの緩急で非常に印象的でした
未視聴の方、一度目を通してみてはいかがでしょうか?