退会済のユーザー さんの感想・評価
4.1
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
一度は見て考えてほしいアニメ。(推奨)
原作1970~田中芳樹 アニメ版1988~
この作品の事を書くとなるとかなり長文になってしまう
随分前に、面白いと友達から本を貸してもらって原作を読んだのだが、その面白さに時を忘れてしまったのを覚えている。
何がそれほどに面白かったのか?
私はその頃随分と変わっていて、歴史や政治、社会と個人とか思想系の虜になっていた。
より良き社会システムとはどういうものであろうか?という問が私にとってとてつもなく面白い題材だったのである。
社会主義、資本主義、共産主義、封建体制、独裁政治、共和主義、宗教によってコントロールされた社会、選民思想…
どんな思想であれ社会体系であれ、一旦成功してもどれも腐敗して再スタートを強いられる。
それは何故か?
本作品には二人の個性的な人物が登場する
一人は民主主義の体制の中の戦術戦闘の天才であるが、腐敗しきった民主政治によって苦戦を余儀なくされる
もう一人は、腐敗した封建主義を打破しようと立ち上がった清廉潔白なこれもまた戦術戦闘の天才で、最終的に独裁政治を敷く人物である。
このアニメを見る限り、政治体制としての優劣は付けがたいのだ。
腐敗した民主主義は出口がなくただ政治に翻弄される。
潔白な独裁政治は腐敗を驚くべき速度で改革し、民衆は解放され歓喜で迎えられる。
ここで気づかされるのは、政治システムはともかく、それを支えるべき民衆の愚かさである。
民主政治は確かに不幸な独裁者を生まない、全てに民に政治家を決定さる優秀なシステムであるが、愚民によって腐敗していくのである
愚民は、自らが選んだ政治家をまた自分の都合によって批判ていく…
本作品の奥の深さはこういう歴史が何度も繰り返した政治と腐敗を見事に描き切っている所なのだ
随分と小難しい話になってしまったが、本作品はそういう視点で見てほしいと思う。
勿論、本作品にも荒い所はある。
特に戦闘シーンなのだが、作者は歴史から戦術を再現したのだろうが、宇宙空間において歴史上の戦闘戦術はありえない。
無重力空間で布陣をしても上下にも戦闘があるので、円形布陣でないと対応できないだろうとか、物理的に戦闘をしなくても、小さな岩石を相手に打ち込めば死なずに済むだろうとか、色々な突っ込みどころはある。
しかしながら、それ以上に前文に書いた社会システムの考察部分において、本作品以上に描き切った作品は全世界見回しても皆無だろうし、その小難しくなる内容をアニメで見れるというのは至福である。
ということで高評価としたい
<追記>
どうも書き足りないので追記したい
私がこの作品に他とは違う感情移入をしているのは、私たちも実はこの作品と同様に、本当の歴史に登場する一個人だと思うからだ。
単純に例を挙げると、今、尖閣や竹島をめぐって中国や韓国との間に問題が起こっている。
ネット上やデモでも、人種差別的な発言や主戦論を唱える人々を目にする事も多くなってきた。
主義主張は誰にでもある事なので、その方法論や内容を一々は批判しないが熱く熱狂的である。
そんな時にこのアニメでも見て、客観的に自らを考えるのも一興である。
主戦論者の一部には、他国より日本の武力は勝っているから勝てるという者がいる。
しかし、戦術的に竹島や尖閣で勝ったからといって、その後どうするとかの重要な戦略を見たことがない
戦略ならば、実は竹島や尖閣等放置して対局的に勝つということもありえる。
又、「戦えば勝てる」という主戦論の人々の多くが、現地で戦う自衛官でもなく、安全な(安全だと信じる)民衆の一部が大多数であろう。
戦いに赴く兵士はさぞかし軽い発言だと思っているだろうに…
この作品において悪役のヨブトリューニヒトやボルテックが居るが、その悪役に近い思考を持つのは実にたやすいのではないだろうか?
また長く小難しくなったが、自分もまた本当の歴史に身を置く愚民で、愚民らしくこの束の間の平和を楽しみたい
せめて、配慮ある愚民ぐらいにはなれるのだろうか…^^;