三崎鳴 さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
虚淵作品らしさとは何か/本編との齟齬
「Fate/zero」の後半部分。前半部からは1クール分の期間を開けて放送された。まず本作を評価する上で前提として認めなければいけないのは“人気度”と“映像作品としての完成度”である。blu-rayDiscの売り上げ枚数は4万枚以上と歴代のアニメ作品の円盤売上げ史上でも上位に位置する事実がこの作品の人気と、「まどか,Fate/zero」と二作立て続けのヒットで虚淵玄の名を馳せたことを認めざるを得ない。次に映像作品としての質は高く、CGと手描きの巧妙な組み合わせ、視覚的効果の高い多彩な色彩の塗り分け、アクションシーンや駆け引きの際の巧みな演出力には文句のつけ様がない。ただし本作を「Fate/staynight」のスピンオフということを念頭においてみると脚本に疑問を抱かざるを得ない。セイバーのキャラ立ての崩し、聖杯の意義、と作者間の同じ作品に対する理解の違いが垣間見える。一つの孤立した作品として見れば、所謂、虚淵作品らしさの残る脚本だが、これを公式スピンオフとした以上は設定に矛盾が生じてはいけない。台詞回しこそ巧いものの、題材としてバトルロワイヤルを扱っているにも関わらず、どうも緊張感が無く切羽詰る様子もない。ただその点に関してはstaynightも同様であるようなので譲歩出来るが、本作の評価を分かつ理由の一つでもあるだろう。視聴者層の間で賛否が分かれるのは本作がFateシリーズの一作としての作品だからか。結末については個人的に虚淵作品にしては薄い部類だと感じた。
一つ、虚淵玄という脚本家について。この方の描くキャラクターはどうも人間の汚い部分や弱い部分を反映することが多い。例えば、“ガルガンティア”のレドならば突如反戦主義に転換する軍人、まどかなら暈されつづける真実にひたすら振り回され、特に本作のキャラクターはメインを張る切嗣をはじめとして大人としての倫理は何一つ持ち合わせていない人間のオンパレード。これがこの人のやり方なんだ、と割り切れる人でないと虚淵作品にはヘイトを溜め込むことになってしまうだろう。