HG anime さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
圧倒的。鳥肌を超えて戦慄すら感じる。
キャラクターデザインやジャンル的に普段ならほぼ見向きもしないであろう作品だが、『あにこれ』で評価が高かったので観ることにした。しかし、1話だけ観てしばらく保留していた。最近再び見始めたところ、4話くらいから観るのを止められず、最後まで一気に観てしまった。食わず嫌いって本当に恐ろしい。猛省しました。
私はどちらかといえば文系の学道を歩んでいるが、予てから宇宙の真理に興味があり、相対性理論やポアンカレ予想やフェルマーの最終定理などの関連参考書を一時期読み漁った。そういうことを学んでいくと、幽霊やタイムトラベルや瞬間移動といったオカルトなことを非科学的などと片付けず、むしろ本当にあり得るのではないかと思ってしまうし、この広い宇宙には地球外生命体も地球外高度知的生命体までもいると思っている。その点この作品を観賞中も魔法少女や宇宙人キュウべぇの存在が無理なくすんなりと頭に入ってきた。それらの設定もとても秀逸だと思う。
魔法少女は希望で始まり最後に魔女として絶望で終わる。そしてまた他の魔法少女がその魔女を駆逐し、自身も最後魔女になるというサイクルはとてもバランスがとれているし、エネルギーを生み出して縮小する宇宙を延命できるというエネルギーサイクルも面白いくらい納得がいく。でもその代償として若い少女が死ぬ。それも絶望をその目に浮かべて。その地獄の連鎖と自分のために地獄の因果の輪にはまりこんだほむらちゃんを救うために自らを犠牲にして自分自身を宇宙の定理にしたまどかに胸が熱くなった。
話は変わるが私たち人間の体はどうしてこうも精巧で美しくつくられているのだろうと誰しも一度は思ったことがあるだろう。それは私たち人間を含めた地球上の生物の先祖に、まどかのような存在がいたからだと思う。例えば地球は初期の頃、赤道付近に近いほど膨らんでいて遠心力の影響で重力がとても低かったらしい。たった2億年くらいまえの地球でも現在の地球とは一日の時間も酸素濃度も重力も違う。ブラキオサウルスのような恐竜を現在の地球に連れてきたら自重を支えることすらできないかもしれない。環境に合わせて自分の体の定理を変えるためにどれほどの苦労があっただろうかと考えても想像がつかないが、それはおそらくものすごい労力と犠牲のいることだっただろうと思う。身を賭してDNAを変革させて子孫を環境に適応させていった『まどか』がいたはずだ。だからこそ私たちは自殺などもってのほかで、自分や他人を大切にしなければならないと思う。この作品を観ていろいろ考えさせられて、視聴前よりもちょっぴり優しくなれた気がする。
最後にさやかちゃんのことについて少し。物語中盤で彼女が魔女になってしまったのは、自分がした善行に見返りを求めてしまっていたのが原因だった。けれども私は彼女の人間臭くてちょっぴりバカなところが大好きだ。目の前で傷ついている好きな人を見過ごせず、恭介の手を動かせるようにする代償に自分の命を捨てる覚悟をするほど恭介が好きだった彼女。見返りを期待してはいけないとあれほど事前に忠告されていて、考えたし覚悟もしたうえで自己犠牲をはらったとはいえ、いざ好きな男が他の女の横を歩くのを見てしまえば自分はなんのために魔法少女をやっているのだと思ってしまうしそんな自分に自己嫌悪も抱く彼女。でも最後には『恭介がバイオリンを弾いている』ことに嬉しそうだった。そこにいた彼女は『恭介がバイオリンを弾く』ために自分の命を犠牲にしたことを後悔していなかった。私はそこに究極の愛を感じた。私は小学生の時の初恋の相手のことが今でも忘れられない。その女性のためなら死んでもいいと今でも思っているが、もしそういう状況があっても、せめて自分が彼女のために死んでいったことを彼女に知ってもらいたいと思ってしまうだろう。だから私はそれも届かなかったのに最後は笑っていたさやかちゃんを愛おしくすらある。さやかちゃんの恋は美しくて悲しい恋でした。
世界中の人間がこの作品を観れば、少し戦争が減りそうな気さえする。日本人に生まれて日本語が理解できてよかったと心から思える。絶対に死ぬまでに観るべきすばらしいアニメでした。