遥か彼方 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
セーラが可哀想で泣いた事って無かったなあ・・・そして「俺が、ミンチンだ!」
「泣ける作品」「可哀想な物語」の金字塔?のイメージがあるこの作品。
よくよく考えてみたらセーラを可哀想だと思った事が無かった事に改めて気付いた。
こう書くと冷徹な人間だと思われそうだが、泣ける作品は何度、いつ観ても泣ける。寧ろ「ここで泣くか!?」と言う所で泣く。
この作品を観て泣いた所が有るとすれば、最終回辺りのセーラが幸せになる所くらいだろうか。
「良かったね、頑張ったねセーラ」セーラの今までの忍耐が報われた。その瞬間に泣いた、かも知れない。
私は幼心でも確かにセーラが可哀想だと思っていたのか?と自問自答している。
それより寧ろセーラが羨ましかった、のかも知れない。
いや、苛められたいとかそう言うドが付く趣味めいた事では決してない。断じてない・・・(?)
彼女は本当に心の底から一人ぼっちになった事、孤独を味わった事が有っただろうか?
苛められた後、必ずベッキー始め誰かが彼女の周りに集まって来て、彼女を励ましそこにはいつも明るさや優しさが満ち溢れていた。監禁状態っぽくされた時でさえ、仲間との心の繋がりを感じられた。
私は苛められて辛い中でも皆を笑顔に出来る強さを持ったセーラが可哀想と言うより、彼女の人間的な強さが羨ましかったのだと思う。
だから「可哀想だから泣けてくる」より「羨ましい、そして
この強さは現実にはないものだ」と感じていたのじゃないかと思う。
実際はセーラなど足下にも及ばぬ過酷な状況で一日、一日を必死で命懸けで生きている子供達もいると言う現実をそれ以後にニュースなどで知る事になる訳だが。
後ここまで苛められるこの作品にその頃は理不尽さを感じていたのかも知れない。勿論「理不尽」なんて言葉は知らなくて「どうしてここまで苛められるのだろう、この作品は何故こんなに過酷な物語なのだろう」と言う疑問を持っていただけだったと思う。今考えればセーラの「可哀想に見える」環境に、物語自身に秘かに怒りを覚えていた気がする。
ただ今改めて思い返してみるとミンチン先生は良い悪役キャラだったなあと思う。
私事だが小学校のクラス会でミンチン先生を演じた。勿論立候補して、だ。
自分が主役など張れる容姿ではない事を熟知していて、その頃は敢えてお笑い役を買って出ていた。
それでも自分の存在で笑ってくれるのが嬉しくて、私はミンチン先生になりきった。ただ単に悪役を演じてみたかったのかも知れない。
母から茶色のパーマのかかったカツラを借りて、服もそれなりにドレスアップ、10本の指全てに指輪を嵌め眼鏡をかけ出来る限りミンチン先生になりきった。
お陰で教室に入るなり大爆笑を頂けたが、自分の格好がおかしくて台詞はグダグダ。
それでも私がミンチン先生に即座に立候補した訳、お笑いだけではない筈だ。
ミンチン先生の魅力。
多分だが今あれ程いやらしく苛め倒し、セーラが幸せになっていくのに反比例して不幸になっていくのが観ていてスカッとする悪役女性キャラはいるだろうか?あそこまで嘆き悲しむ姿に「ざまあみろ」と思える良い悪女はいるだろうか?
言い方は変だが「純粋ないやらしい女性」の魅力に溢れていたキャラだと思う。
今のアニメでも女性の「純粋な悪役」は意外と少ないのではないかと思う。特に女性はどこかキャラを壊してはいけない感が有り、まあせいぜい色仕掛けの悪女くらいなものじゃないかと言うイメージだ(私が知らないだけかも知れないですが)
アニメで受け入れられるキャラはドンドン拡がりつつも、女性の(言葉は悪いが)胸くそ悪い悪役は今も昔もそれ程作られているように思えない。
そんな中でミンチン先生は、本当に最後まで素敵でいやらしい悪女だった。
多分私は当時から、本当はミンチン先生が好きだったのかも知れない。セーラを苛め憎々しく思いながらも自分がミンチン先生を演じてみたい、しかも真面目じゃなくお笑いとして彼女になりたいと言う何とも屈折したミンチン愛もあったものだと思う。
もしもう一度ミンチン先生を演じられる機会を与えられたなら・・・私はお笑いじゃなく真剣にセーラを苛めるだろう。悪役の魅力に溢れた彼女になりきる為に。